第114話 お前が前を行け! 私が生き残るために!
「ガイアさんはどうやってここまで辿り着いたんですか?」
ユウタの問いに私はこう答えた。
「私は、倒れた仲間が持っていたダンジョンマップを手に入れることが出来ました。だけど……」
テトラのマッピングは、中途半端だった。
私は作りかけのマップを頼りに、ユウタを探しながら二階への階段を目指していた。
「だから、ユウタさんとボス部屋の発見は偶然です」
決して、ユウタの命を狙うためにここに現れたわけではない。
偽物ガイアでないことだけはアピールしておかなければ。
「倒れた仲間って? 僕達の他に誰かいるんですか?」
「はい。
私は偽フィナを睨んだ。
こいつらが私の仲間を殺したんだ。
「分かりました。では何故、この扉の向こうがボス部屋だと言えるんです?」
「ラストダンジョンのボス部屋は扉の向こうにあると決まっているのです。これは探索隊の調査結果で分かったことです」
これ程疑り深いユウタも初めてだった。
彼がフィナを信じたいという気持ちの表れなのだろう。
本物のフィナが現れればユウタも目が覚めるのだろうが、そんな都合の良いことは起こらない。
ユウタは目の前にいるフィナを真実だと思っている。
「ユウタさん、目を覚まして下さい! この扉を開けたら最後、絶対に罠が待ち構えています! 偽フィナはそこにあなたを誘導しようとしているんです!」
私の訴えは虚しく響くだけだった。
ユウタは再び扉に手を添えた。
「ユウタ! もういいじゃん。さあ、この扉を開いて!」
偽フィナの横顔がニヤリとするのが見えた。
「いや……、フィナ。僕はこの扉は開けられない」
「え?」
ユウタは偽フィナに向き直った。
「君が開けてくれ」
「え? か弱い女の子を先に行かせるの? 君が、私の前に立って守ってよ」
偽フィナが首を横に振りながら、後ずさる。
「大丈夫。何があっても僕が君を守るから」
「え、ぇえ?」
偽フィナはそれでも拒み続けた。
だが、ユウタは意に介していないようだ。
冷たい声でこう言った。
「僕の知ってるフィナは好奇心旺盛でバカだ。本物の彼女なら、僕の言うことも聞かずにこの扉を開けていた」
「くっ……」
偽フィナは自分の腰に携えたナイフに手を掛けた。
遂に本性を現した。
「
ユウタの手の平から光が放たれた。
偽フィナは白い光に弾き飛ばされた。
衝撃で四肢をビクつかせた偽フィナは、鉄の扉に激突した。
その拍子に扉が開いた。
「ぐぎゃあぁああああっ!」
扉の向こう側に投げ出された偽フィナが、左右から吹き出す業火で焼き尽くされた。
私とユウタは開いた扉ごしにその様子を見た。
偽物にそそのかされていたら、今頃ユウタは灰になっていただろう。
「ユウタさん……信じてくれて、ありがとうございます」
私はユウタが偽物とはいえフィナを選ばず、私を選んでくれたことが嬉しかった。
「ガイアさん、礼を言うのは僕の方です」
ユウタと私はしばし見つめ合った。
彼の瞳に映った私は、もう歪んでいなかった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます