第97話 クラスで目立ちたいから遊び人ばかりのパーティを組んで、苦戦し後悔する

 デドリアーノは4人の付与術師を従えていた。

 ステータスを見ると彼女達のレベルは70だった。

 紫色のローブに包まれた身体は身長が1メートルも無い。

 そのせいで、デドリアーノの巨人振りが際立つ。

 武闘家一人に付与魔術師4人というのはあまり見たことが無い。(私にとって)

 決してバランスが良いとは言えないパーティ構成だ。


「不気味だな……」


 私は思ったことを口に出した。

 ありえないパーティ構成を敢えて取ってくることが、気持ち悪い。

 こちらは、先程の余裕がある間に、鉄騎同盟としてパーティを組んでいた。

 戦う準備は出来ている。


「マリアン様が来るまでの間、この俺様が相手してやるぜ!」


 鞭を振り上げ、床に叩きつける。

 鞭の材質は竜の鱗で作られていて、板張りの床が木くずをまき散らしながら砕け散った。

 これに打ち据えられたらひとたまりもない。

 逃げようとしたメンバーが踵を返して戻って来る訳だ。


「鞭を使う武闘家何て初めて見た」

「リンネ、俺も初めてだ」


 武闘家に装備出来る武器は、手の甲に装着する爪やグローブなど素手での攻撃を補助するものや、かかとに刀の刃が付いた靴など、蹴りによる攻撃を補助するものがある。

 己の肉体を武器にする武闘家ゆえに、剣や斧や槍などの手に持つ武器は装備出来ない。

 ただし、鞭だけは装備出来た。

 鞭は扱いが難しく、隠しパラメータ『器用』が高くないと使いこなせない。

 調教師テイマーが使役するモンスターを飼い慣らす際に使うのが鞭の主な用途であり、戦闘で使う者は全職業を通してみても少ない。


「どんな戦い方をするか見せてもらおうか!」


 タイチが右手に身の丈ほどもある斧『バトルアクス』を構える。

 左手には鋼鉄の盾。

 重い武器は『筋力』という隠しパラメータが高くないと装備出来ない。

 彼はそのパラメータが異常に高く、相当な重量の武具も難なく装備し使いこなす。

 巨人が叫ぶ。


「どりゃあ!」


 鞭がしなりながら、盾役のタイチに襲い掛かる。

 タイチはそれを鋼鉄の盾で受ける。

 盾の表面は一切欠けることが無かった。


「どうした? 大した事ねぇな。そんな武器に頼ってないで、武闘家なら素手でこい!」


 タイチが挑発する。

 モンスターなら敵愾心ヘイトを煽ることも出来るが、対人間の場合は、挑発を受けた者の状況や性格による。


「その手には乗らないよん」


 デドリアーノは顎髭を撫でながら、ニヤリと笑う。

 タイチと同じ脳筋っぽいデドリアーノだが、挑発に乗ってくることは無かった。


「ならば、こっちから行く!」


 逆にタイチがイラっと来た様だ。

 タイチの身長は1.9メートル、デドリアーノは3メートルでその差は1.5倍ほどある。

 タイチは地面を蹴り、飛び上がった。

 バトルアクスを振り上げ、デドリアーノの頭上に振り下ろす。

 デドリアーノは鞭をその刃先に当てることで、軌跡をずらす。


「ぐくっ!」


 上空でバランスを崩したタイチに、デドリアーノが前蹴りを仕掛ける。

 タイチが盾でそれを防いだ。

 地面に着地したタイチはすぐ様、攻撃を仕掛ける。


つづく

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