第96話 ギルド内格差と、中ボス登場
「タイチさん、あなた達の陰で助かりました」
彼はギルドホールの門番であり、私を辺境の狩り場で救ってくれた人物だ。
「俺達を雇ったことを幸運に思うんだな」
タイチは偉そうに応えた。
返り討ちにされたDEATHの面々は戦意を失った様だ。
彼らは皆、逃げ惑い、そして一斉に意思を同じくしたかの様に、ギルドホールの出口に殺到していた。
だが、自らが放った火の手で行く手を遮られ逃げることにさえ苦戦していた。
そこに、
「しかし、お前ら戦闘慣れしてねえなあ」
私もタイチと同じ感想を持った。
ロドリゴなど上層部のメンバーは別として、
そして、実戦経験が無い様だ。
それに対して、ロドリゴはこう答えた。
「我々、大所帯のギルドは一部のメンバーだけが狩り場での戦闘にあやかることが出来るんです。ほとんどのメンバーはレベルアップの機会が無いんです。こうしてる内にも、強いメンバーは狩り場でレベルアップしています」
「ギルドメンバーが多いっていうのも、デメリットなんだな」
タイチが傷付き倒れている
大所帯ギルドならではの問題だった。
ギルド内での格差は、メンバー間同士での不満となって現れる。
「それは別にしても、最近は狩り場でのモンスター不足が著しいな」
私は思っていることを口にした。
確かに、といった感じでロドリゴも頷く。
「それにしても、ガイアってやつは一体何なんだ? こんな時に出払ってるなんて」
「ガイア様と呼んでください。あの人は、今、大事な役目でこの場を離れているのです」
大事な役目か……。
「彼は救世主に相応しくない。私が救世主であるべきなのです」
ガイアはユウタのことを、そう言っていた。
彼女はユウタを殺しにでも行ったのだろうか。
ならば、今、辺境の狩り場にいるユウタが危ない。
私はこの場から早く、立ち去りたかった。
DEATHのメンバーが出口の扉を壊し始めた。
だが、彼らが壊す前に外側から、何者かがその扉を蹴破って入って来た。
「てめえら、だらしねえぞ!」
何者かの叫び声と共に、肉が激しく打ち据えられる音が耳朶を打った。
「ぎゃああ!」
出口に殺到していたDEATHのメンバーが踵を返し、こちらに向かってくる。
まるで、逃げる様に。
「ほれ、進まんか! 逃げるな! ほれ!」
扉を蹴破って入って来た男は、身の丈は3メートルほどもあった。
人間にしては巨人の部類に入るであろう男。
岩の様にゴツイ顔面に、頭頂部には鳥のトサカのような青いモヒカンヘアが乗っかっている。
棍棒の様に太い腕と足を大きく振って前進して来る。
右手に持った鞭をしならせ、傷付きボロボロになったメンバーをしばき上げる。
しばかれたメンバーはたまらず、こちらに向かって逃げて来る。
私は巨人のステータスを確認する。
レベル92の武闘家、デドリアーノ。
この不意打ち作戦のボスといったところか。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます