第83話 この世界は私の箱庭! だから、救世主は私が潰す!
ユウタと名乗る救世主を甘く見過ぎていた。
私は、HPが一桁になるほどの重傷を負い、ユウタから逃げるのに精いっぱいだった。
「マリアン! 待て!」
ユウタの声が聞こえる。
彼もまた瀕死のはずだ。
私は追いかけて来るモンスターを振り払いながら、何とか森を抜け、周りが見渡せる草原に辿り着き、一息つく。
薬草で傷を癒しながら、ここに至るまでを思い出す。
◇
私のフレンドリストに載っているミチヤスと言う名前の先頭には、その
数日前、私は奴に命令した。
辺境近くの狩り場に拠点を作れ、と。
そこで何があったかは知らないが、奴は死んだという訳か。
恐らく、同じ狩り場で別のギルドの人間と鉢合わせになり、戦闘にでもなったのだろう。
辺境の近くに良質な狩り場があるという噂は、街で生活していると自然に耳に入ってくる。
特にこの前の
それはつまり、金や素材やアイテムが手に入るチャンスが減っているということだ。
私がギルドマスターをつとめるギルド、DEATHは200人もの人間を抱えている。
そして、その傘下には50もの中小ギルドを従えている。
それだけの人間を抱えていたら、ほんのちょっとの金や素材やアイテムでは組織体として円滑な運営が出来ない。
ギルドには二種類ある。
魔王を倒すことを目指しているギルド。
魔王を倒すことを目指していないギルド。
DEATHとその配下は後者に属する。
私はこの世界で、自らが王になることを目指していた。
そのためには、大量の金や素材やアイテムが必要だった。
もちろんそれらは、大地を耕したり、洞窟を探索したり、地道に働くことで手に入れることも出来る。
だが、それではほんの少ししか手に入れることが出来ない。
私は危険を冒してでも、それらが大量に必要だった。
手に入れた素材で、幻想的な武器やアイテムを作り出し、それを高値で販売し利益を得る。
手に入れた利益で、象徴的で巨大なギルドホールを作り、自分の元に人間を従える。
強力な武器や魔法を手に入れ、いずれは魔王さえも従え、この世界を私のものにする。
だから、モンスターは私にとって敵でもあるが必要な存在だった。
死というリスクさえ受け入れれば、モンスターから大量の報酬が得られる。
モンスターを召喚する大元の魔王は、私にとってなくてはならない存在だった。
だから、魔王を倒そうとするギルドは私の敵だった。
絶対成敗というギルドは、その辺の考え方が私と異なるので、締め上げることにした。
成果として、ポンの商売を奪うことが出来た。
全ては上手くいっていた。
だが、救世主が現れた。
つづく
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