第82話 命をもらって命をつなぐ
目を覚ますと、ボロボロの板で出来た天井が目に飛び込んで来た。
「あっ! ユウタがやっと起きた!」
僕を見下ろす、フィナと目が合う。
彼女の目は赤く、泣き腫らしたかの様だった。
「ユウタさん!」
セレスとウエンディも駈け込んで来た。
ここはフィナの家だ。
だが、一体どういうことだ?
僕は確かガイア達と森で戦い、レベルアップに励んでいたはずだが……。
「ユウタ、覚えてないの?」
「……うん、何があったんだ?」
そういえば、ガイアがいない。
「ユウタさん、あなたは死んでいたんです」
「え!?」
「ガイアさんが蘇生魔法で蘇らせてくれました」
セレスの言葉が引き金になり、僕の記憶が少しずつ蘇って行く。
「確か、僕はDEATHのギルドマスター、マリアンに襲われて……そんなことより、ガイアさんは!?」
「彼女は……」
セレスは言葉に詰まった。
◇
仮の住処で、ガイアは目を閉じたまま伏せていた。
彼女のステータスを確認すると、HPは0のままだ。
彼女は自身の命と引き換えに蘇生魔法を僕に使い、死んでいた。
「この世界には蘇生魔法などまだ存在しなかったはずだが……」
僕は彼女の手に自分の手を重ねた。
そんなことをしても生き返るはずはないのだが、そうしたかった。
彼女は救世主になりたかった。
だから僕を倒して、本当の救世主として世界に認めてもらおうとしていた。
目を閉じて、僕は自分のステータスを確認する。
レベルは90になっていた。
ガイアのお陰だ。
レベル90になった僕に彼女は戦いを挑んで来た。
その時、DEATHのギルドマスター、マリアンが現れた。
「ネスコさんに通信で訊いたら、今度の
「そ、そんなことってあるのか……」
僕は驚き、ガイアの雪の様に白い顔を見た。
その顔は美しく、死なせるのはもったいないと思った。
その追加された治癒魔法は、制限付きのものだった。
ネスコはこの魔法が追加されたことについて、こう言っていたらしい。
「この世界を攻略するためには、もってこいの魔法だ。だが、神がそんなに都合良く命を扱える魔法を人間に与えるとは思えない。だが、誰かが死ぬことで誰かが生き返るという制限付きなら、蘇生魔法を人間に与えたことも合点がいく。神はこの魔法を人間がどう使うか試しておられるのだろう」
治癒魔法使いならレベル90から使えるらしい。
ならば、僕も使えるのだ。
「ガイアさんは、何で僕に蘇生魔法を……」
僕はマリアンと戦った。
皆を守るために。
つづく
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