ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
第56話 辺境の狩り場でレベル上げをしていた少女たちは、街から転移扉を使って行き来していた。
第56話 辺境の狩り場でレベル上げをしていた少女たちは、街から転移扉を使って行き来していた。
「このぉ~っ! テルミンとユメルの仇!」
フィナが顔を真っ赤にして、ヒノキの棒を振り上げる。
それを、セレスに振り下ろそうとする。
「危ないっ!」
僕はフィナの怒りの一撃を喰らい、HPが10減った。
「ユウタ、どいて!」
「どくわけないだろ! 僕が今さっき命を懸けて守った人なんだぞ!」
「ごめんなさい! フィナさん、ユウタさん」
振り返ると、セレスが頭を下げていた。
顔を上げ、絞り出す様にこう言った。
「私達のギルドのメンバーが、転移扉を守っていたドワーフを殺しました……。あのドワーフは、フィナさんの仲間だったんですよね? ……もしそうだとしたら取り返しのつかないことをしてしまいました」
セレスは泣いていた。
「詳しく話してくれないかな」
僕は襲い掛かろうとするフィナを、必死に羽交い絞めにしていた。
彼女は足をじたばたさせ、ヒノキの棒を振り回している。
さっきから棒の端っこが僕のおでこに当たって痛い。
「はい……」
セレスはしゃくりあげるのを堪えながら、話し始めた。
「私達人間が住む街に、亜人間が数人いることは有名です」
確かに。
実際、ネスコは街でトラ猫協同組合を運営している。
何かの用事で街に出向く亜人間もいただろう。
それらが人間の目に留まっていない訳が無い。
「それを当たり前だと思わない人間がいました。彼らは亜人間がどうやって遠く離れた辺境から街に行き来しているのか気になったのです。何より、街に来る亜人間は沢山のレアな素材を持っていましたから、余計に彼らは亜人間に興味を持ちました」
調査の結果、亜人間が転移扉を使って辺境から街へと行き来していたことが分かった。
そして、辺境の近くに良質な狩り場があることも分かった。
「転移扉の場所は、トラ猫協同組合というギルドにいたドワーフを脅して聞き出しました。ユウタさんとフィナさんは、その……」
セレスは僕とフィナのステータスを見て、どこに所属しているか分かったのだろう。
そのうえで、話しているのだ。
「うん。トラ猫協同組合のメンバーだ」
「ごめんなさい」
「うがぁー!」
「やめろ! フィナ」
テルミンは殺された。
そして、武器工房の地下で転移扉を守っていたユメルも殺された。
「つまり、狩り場を求めた人間達によって、テルミンとユメルを殺されたって訳か」
僕はため息が出た。
確かに、人間の数に対して狩り場が足りなくなっているのは感じていた。
ネスコが言うには、それに加えて、今度の
狩り場の奪い合いは日常茶飯事だが、それが辺境にまで及ぶとは。
人間の欲望は世界を食いつくす勢いだ。
ある意味、魔王より恐ろしいかもしれない。
「そもそも、亜人間に興味を持ち、転移扉の存在を知ろうとしたのは誰なんだろう?」
セレスやウエンディ達は悪くない。
この騒動には黒幕がいて、そいつを何とかしない限り、辺境への被害は終わることが無いだろう。
「それは……」
「おう! お前ら、パワーレベリング、やってるか!」
セレスが口を開き掛けた時、森の中からのっそりと男が現れた。
チェインメイルに身を固めた体は、身長二メートル、体重120kgくらいか。
角が飛び出したバイキングヘルムをかぶり、自身の身長と同じくらいの斧を持っている。
黒い髭ともみあげが大きな顔面を縁取っている。
脂ぎった獰猛な顔の真ん中には、飛び出しそうなギョロ目が光っている。
僕は生理的に恐怖を感じた。
つづく
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