第38話 閉じ込められた最初の世代はその数を減らしていく。そんな中、彼らは自分達の子孫に、その夢を託した。

 レゴラスが寝ると言うので、今日の面談はお開きとなった。



 ガイアの部屋に戻った。


「その座り方、足が疲れないか?」

「正座が?」


 正座という座り方らしい。

 私は胡坐をかいている。

 そういえばレゴラスも正座だった。


「この方が落ち着くのです。あなたもやれば、心地よさが分かります」

「ふぅん」


 やらないけど。

 ガイアが急須というもので、湯呑という入れ物に温かいお茶を淹れてくれた。


「リンネ」

「何だ?」

「疑問に答えましょう」


 訊きたい事は山ほどあった。

 そもそもゲームとは一体何なんだ?

 何故、レゴラス達はゲームに閉じ込められたのか?

 ゲームの中で生まれた私は一体何者なのか?

 そして、一番気になるのは、ゲームクリア後、ゲームの中で生まれた私はどうなるのか?


「まず、ゲームとは……」


 なるほど。

 ガイアの説明でゲームをしたことが無い私も、そういうものかと理解出来た。


「大祖先様達がゲームに閉じ込められた理由は分かりません」


 ガイアは一口茶を飲んだ。

 私も茶を飲み、問い掛ける。


「魔界プロジェクトはフリーゲームだったんだろ? フリーにした理由は、それを地球ちきゅうの皆に触れさせたかったからだ。ゲームを作った者の思惑通り、多数の人間がゲームを始めた。結果、多数の人間はゲームという餌に釣られ、ゲームという牢獄に閉じ込められたんだ」


 私は自分の考えを整理しながら、独り言の様にガイアに語った。


「何故、そんなことをする必要があるのか? 何かの陰謀か? ゲームを作った者か、それを裏で操る者が黒幕なのか? 魔王を倒す以前にそれを知りたい」


 その頃の地球ちきゅうの情勢について、レゴラスに訊くことが出来れば、何か分かるかもしれない。


「さすが、暗殺者。探ることについては鋭いですね」


 私はガイアに褒めてもらって、少し照れた。


「さて、私達について、ですね」


 私は小さく首肯した。


「私は大祖先様の子供、つまり母上から生まれました」


 この世界、否、もうゲームと呼ぶべきなのか?

 この世界で生まれた私は、この世界をゲームと呼ぶ気にはなれない。

 だから、この世界と呼ぶ。

 この世界において、皆、寿命が来れば死ぬ。

 だから、子孫を残すという選択肢がある。

 ゲーム内で人間同士がお互いの合意のもと、『結婚』という契りを交わせば子孫が作れるようになる。

 脳内でメニューからそれを選べば、10か月後に子孫が誕生する。

 ただ、それだと淡泊過ぎる。

 なので、愛し合う恋人同士なら(政略結婚でもない限り)戯れることで作ることもある。


「大祖先様達は自分達の世代だけで、魔王を倒すことは無理だと判断しました。自分達の子供世代に託したのです。地球ちきゅうに戻るという夢を……。ですが、思う様に行きませんでした。子供達の中には、そのことに反抗する者もいました」


 確かにそうだろう。

 親は魔王を倒して地球ちきゅうに戻れる。

 だが、この世界で生まれた子供達は、地球ちきゅうには戻れない。

 戻る肉体が無いのだから。

 ゲームがガイアの説明の通りなら、私はただ浮遊する電子データでしかない。


 だから、


 ゲームがクリアされれば、私もガイアも、この世界で生まれた者全て、この世界もろとも消えるだろう。

 5大ギルドマスターは(ガイアは除く)、この事実を知っているのだろうか?


 魔王を倒すこと。

 それは、姫から、富と栄誉を送られること。

 皆、そう思っている。


 ガイアの話を聴くと、それが勘違いか、嘘の情報に踊らされているか、そのどちらかだと分かる。


「ガイア」

「何でしょう?」

「お前は自分が消えると分かっていて、それでも魔王を倒すという理由は何だ?」


つづく

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