第43話 姫は救世主がお嫌い!? 治癒魔法使いの頑張りでヤンデレでもツンデレにもなるかも!?

 ユウタとフィナを狩り場に残し、私は姫の元へ向かった。

 グリフォンと転移扉、そして徒歩で移動すること半日。

 日が暮れる頃、ようやく姫がいる城に辿り着いた。


 シンとした大広間。

 入り口から姫が座っている玉座まで、真紅の絨毯が一直線に続く。

 ここは姫の執務室。

 そして、彼女との謁見の場所だ。


「久しぶりだな。ネスコ」

「姫、お目にかかれて光栄です」


 シャンデリアの明りに照らされた彼女の黒髪。

 頭頂部に出来たツヤはまるで、天使の輪の様だ。

 姫はその大きな目で私を見つめる。

 姫は人間から見たら美人だ。

 亜人間の私から見たらブスだが。


「このほど見つかった救世主について、お話があります」

「ふむ。今度こそ、本物なんだな」


 救世主に選ばれた者は、姫からの加護を受けることが出来る。

 それは、金銭、武力、領地、など多岐に渡る。

 加護欲しさに、自ら救世主を名乗る偽物もいた。


「はい。今度こそ間違いありません。左胸に聖痕がありました」


 姫が頬杖をつく。

 三白眼で私を見る。

 見たことも無い救世主を値踏みするかの様にこう言った。


「あざなど、誰にでもあるだろう」


 偽物を許さない姫は疑り深い。


「エルフの王女の愛に反応しました」


 姫の目が大きく開かれた。


「ふむ……。どんな奴だ?」

「何とも、頼りのない男の子……治癒魔法使いです」


 私はユウタについて知っていることを話した。


「ネスコ」

「はい」

「救世主は誰が選ばれるか分からない。つまり不規則ランダム。救世主を導くために生まれた我々でも、それはどうすることも出来ない。まさに神の領域。それにしても、そのユウタとかいうのは、ちと脆弱過ぎるな」

「確かに」


 姫の言いたいことは良く分かる。

 戦士、勇者、賢者が救世主に選ばれるならまだ分かる。

 だが、ユウタは治癒魔法使いだ。

 それも、ついこの間まで弱小だった。

 レベルアップでどれくらいステータスが上がるかが勝負だ。

 兎に角、余程、強力な守護者を見つけ出さなければ魔王討伐は厳しい。


「気になる点は沢山ある。だが、私はユウタを救世主とみなして支えて行くことにしよう。私の権限の範囲内で」


 私は頭を下げた。

 姫はユウタを、救世主の存在をあまり好ましく思っていないのだろうか。


「姫」

「何だ?」

「この前の世界更新アップデートで、この世界が大きく変わりました」

「分かっておる」


 ゴブリンがらみのクエストの難易度が上がったのもその一例だ。


「これは私の肌感覚ですからもっと調査する必要はありますが……この世界の資源リソースの状況が大きく変わりました」


 資源リソースとは、この世界に存在する素材、アイテム、狩り場、クエストなどの発生頻度のことだ。

 これらは常に人間同士での奪い合いが続いている。


「うむ」

「これからは人間同士での争いも増えるでしょう。ただでさえ少ない資源リソースが更に少なくなったのですから」

「分かっておる」


 姫が気だるそうに頷く。


つづく

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