第31話 もう一人の救世主が登場。本物か偽物か? 守護者認定された美少女は従うしかないのだった。

 たくましい狼の四肢に、これまた狼の頭が3つのっている。

 尻尾の先端は毒蛇の頭。

 背中にもびっしりと毒蛇が無数に絡みついている。


 突然、チート級モンスターが召喚されたことで敵は輪を乱し、逃げ惑った。


 ケルベロスが通った後には、踏み潰され食い散らかされた死体だけが残っていた。


 戦いを要約するとこうだった。


「リンネ。何でガイアがお前に召喚玉サモンをくれるんだ?」

「あちらから声を掛けて来た」


 時はリサを殺した後、場所は街外れにある森の中。

 泉の横で体に付いた血を洗い落としていた時だった。

 真っ白で美しい少女がそこにいた。


「ガイアはどうしてお前がそこにいることが分かった?」

「分からん。だが、兄者、復讐のために二案あると言ったろう。覚えてるか」

「えっと……」


 一つはユウタを呼び戻す。

 これは失敗した。


「もう一つは、『地球アース』の傘下に付くこと」



 そして今、私の目の前に真っ白で美しい少女が座っている。

 地球アースが入居するギルドホールは、この世界では珍しい木造の和風とか呼ばれる建物だった。

 畳敷きの部屋。

 蒼い部屋を照らすのは、障子からうっすら差し込む月光とロウソクの光のみ。

 彼女は一段高いところから私を見下ろしている。


「私達、地球アースが目指しているもの……それは理解していますね」

「はい」


 魔王を倒すこと。

 私達の目的と同じだ。

 ガイアは笑顔になった。

 笑うと可愛らしい。


「何か質問はありますか?」

「何故、私の場所が分かった? あっ……」


 私はガイアの笑顔に気が和んだのか、いつもの口調に戻っていた。

 ガイアは笑顔のまま答えた。


「あなたからオーラが出ているのです」

「オーラ?」

「5大ギルド会議の直後からです。あなたからオーラが出始めました」


 ガイアは神話を口にした。


 『救世主』は『守護者』を引き連れ魔王を倒す。


 ガイアは自分を救世主と名乗った。

 救世主は身近にいる守護者が発するオーラを感じ取ることが出来るという。

 だから、私を見つけ出すことが出来たという。


「これです」


 私は一瞬目を背けた。

 ガイアがローブをまくり、薄い胸を見せたからだ。


「見てください」


 そう促され、ゆっくりと目を開ける。

 白い胸板には、星形のあざがあった。


「これが救世主の証拠です」


 神話に疎い私は、そう言われてもまだ半信半疑だった。

 ただのあざの様にも見えるが……。


「リンネ」

「何だ?」

「大祖先様に会ってください」



 部屋を出て板敷の長い廊下を歩く。

 ガイアが敬っている大祖先とはいったい何者なのか?

 階段を一段一段上がるガイアの小さな背中が、私に語り掛ける。


「魔王を倒す。それは目指していることへの、過程でしかありません」

「どういうことだ?」

「私達の目指していること、それは魔王を倒し、この世界を終わらせて地球アースに戻ること」


 地球アース

 ギルド名と目的が一致しているギルドはいくつかある。

 大抵は嘘か虚勢だ。

 その類かとも思った。

 だが、神話とガイアの存在を絡めると、その地球アースが本当に存在している様にも思えた。


つづく

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