第29話 挑発したら乗って来た。どちらかが全滅するまでのバトルロイヤル・デスマッチ!

 闘技場はすり鉢状になっている。

 斜めになってるところが客席。

 中央の広場が戦う舞台だ。


「絶対成敗が俺達を何で消す必要がある?」


 タイチが困惑している。


「リサを殺したのがお前達だと絶対成敗に報告したら、こう言われた」


 デクが内ポケットから、小型の『収音玉レコーダー』を取り出す。

 指で一撫ですると、モモの声が響いた。


 絶対成敗のギルドマスター モモの発言

<まぁ! 何てことを! あんな奴ら消して下さって結構ですわっ!>


 モモが声を荒げツインテールを振り乱しているのが目に浮かぶ。

 本当の事情を知らない彼女は、私達がただ単に暴走しただけだと勘違いしているのだろう。

 

「ポンの商売を失った絶対成敗に力なんて無い」


 デクが収音玉レコーダーを仕舞う。

 今回のことで、絶対成敗は5大ギルド内での序列が、最底辺になった。

 モモが私達の首を差し出し、他のギルドにご機嫌を取るのは当然かもしれない。


「……という訳だ。お前ら、死んでもらう」


 武闘家デクが手の甲に鉄の爪を装着する。

 ギルドメンバー同士での殺人が禁じられている様に、親ギルドが子ギルドを潰すことは、この世界において禁じられている。

 禁忌を犯した者は、神によってこの世界から消される。

 それがこの世界の摂理だった。

 だから、わずらわしいギルドメンバーを殺したいとき、この様に代行を立てるのが普通だ。


「俺達、全てを敵に回しちまったみてぇだな」


 言葉とは裏腹に、タイチの目は光っていた。

 小刻みに震えている。

 流石、戦士職。

 これからずっと続くであろう戦いの日々--

 それを期待しているのだろうか。


「兄者、ユウタは来ないぞ」

「いらねぇよ」


 死と隣り合わせの方が、燃える、とでも言いたげだ。



 ギルド同士の決着のつけ方には4種類ある。


  ・不意討ち

  (傍目から見て最も汚いやり方。立場的に弱いギルドが、ペナルティ覚悟で一発逆転のために行う。)

  ・デュエル

  (最も損害が少なく傍目から見て勇敢。ギルドから代表者を出しての一騎打ち。)

  ・XX人マッチ

  (デュエルからの派生。XXは人数。ギルドから複数の代表者を出して戦う。)

  ・デスマッチ

  (最も損害が大きく傍目から見て派手。ギルドメンバー総出でどちらかが全滅するまで。)


 何処から聞きつけたのか、いつの間にか客席に人が座っている。

 まばらだが、少しずつ増えて来ている。

 戦いは良い見世物だ。

 他人の戦い方を見て学ぶ者もいれば、ただ単に残酷なショーが見たいだけの者もいる。

 一番多いのは、金を賭けている者だ。

 どちらが勝つか。

 早速、どこかの商人が賭場でも開いているのだろう。


「俺とお前のデュエルで行くか? お前らの方が人数も少ない様だし。それに、お前以外、皆、雑魚っぽいもんな」


 デクが余裕ぶってタイチに提案する。

 確かに。

 ペガサス旅団は30人はいる。

 対して鉄騎同盟は6人しかいない。

 物量では圧倒的に不利だ。

 それにしても、私まで雑魚扱いとは……

 タイチが吐き捨てる様に言う。


「生ぬるいこと言ってんじゃねぇよ。どっちかが全員死ぬまでのデスマッチだ」


 客席から歓声が上がった。


つづく

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