エピローグ
「ワフッ! ワフッ!」
第六階層、神樹のフロアに来たところで、ヨミが嬉しそうに駆け出す。
出会ってから一年近くで、ひとまわり大きくなったヨミ。クロスケさんよりはまだ小さいから、もう少し大きくなるのかな?
白銀の館に正式に入社して一年。チョコが向こうへ行ってから九ヶ月が経った。
私は今年の四月から、基本的に東京で勤務している。六条の別邸にそのまま住まわせてもらえてるし、勤務先は都内ダンジョンの上にできた六条博物館。
仕事の内容は表向きは博物館の事務員だけど、本当の仕事内容は当然、陥没地域の調査と対処。
一応、月に一度は実家に帰って、町子さんに顔見せもしてる。実家も蔵の地下も大事だしね。
『翔子ちゃん、おはよ〜』
「おはようございます、菊媛お姉様」
神樹の前に設置された小さな神社。
ご本神も交えて話した結果、第十階層は本殿、第六階層が拝殿ってことになった。まあ、あの暗い場所よりも神樹があるこのフロアの方がいいよね。近いし。
ちなみに、本殿も拝殿も私たち三人で頑張って建てました。素人でも建てられるようにパーツ化してもらえて良かった……
『チョコちゃんは元気そう〜?』
「はい。昨日来た手紙では随分と北の方に行ってるみたいですね」
毎回というわけでもないけど、菊媛お姉様は私がヨミと散歩に来るとよく話しかけてくれる。
『じゃあ、翔子ちゃんもそのうち?』
「多分、来週頭ぐらいからになるんじゃないかと」
今、チョコはミシャ様たちと北の方、日本で言うと新潟にいるらしい。
向こうで見つかった転移元をこっちに伝えてもらったんだけど、海岸沿いにある山の中にあるっぽい。
まずは向こうでミシャ様たちが見に行って、その後、私たちもこっちで該当する場所を探さないといけない感じ。
「菊媛お姉様は
『うーん、饒ちゃんとこの子だったかな? 確か弥彦山に住んでたと思うわ〜』
「ええ、その弥彦神社の近くっぽいので」
『あのあたりはお米も美味しいから、おみやげはお酒よろしくね』
「あー、はい」
意外というか予想通りというか、菊媛お姉様はかなりの酒豪でした。
石川というか、加賀はお米はもちろん美味しいし、日本酒もかなり有名な感じだしね。
『そうそう、
……
……
……
ええっ!!!???
「もうですか!?」
『もうって。ちゃんと「しばらく」って言ったじゃない〜』
「人間のしばらくと神様のしばらくって違うよねって、勝手に思ってました……」
『人と話す時はちゃんと人の尺度で話しますぅ〜』
ぷんすこな菊媛お姉様をなんとか宥めて詳細を聞く。
いや、でも約一年って『しばらく』なの? うーん、この辺は人それぞれだからなんともかな……
ともかく、繋がっていた二つの世界を問題なく行き来できるように
混沌空間がある頃は、繋がってしまってた世界を渡る時だけ気をつけていれば良かったんだけど、今はその繋ぐところからやるための力が必要なんだとか。
『私がちゃんとレクチャーしたし、神樹ちゃんは大丈夫って言ってるけど、無理はさせたくないでしょ?』
「そりゃもう。ただでさえ半分半分になってて無理してそうなのに」
そう答えると神樹の葉音が大きくざわめく。
「ありがと。でも、チョコが一段落してからで大丈夫だよ」
『はいはい、ここは翔子ちゃんの好きにさせてあげなさい』
菊媛お姉様がそういうと葉音がそよそよとしたさわめきに変わった。なんか納得してくれたっぽい。
「翔子さん、菊媛様、少し早いけどお昼にしましょう」
「館長から差し入れが届いてな」
「ワフッ!」
『わ〜、嬉しい〜』
美琴さんと智沙さんが大きなバスケットを持って現れる。腕輪を見ると十一時をまわったぐらいかな?
さて、チョコが戻ってこれる話、どうやって切り出そうかな……
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