ボクっ娘とポンコツとオタク賢者

129. 翔子と精霊たち

「はあ、こっちももう実家っぽい安心感あるねえ」


「ホントねー」


 またサービスエリアツアーをして六条の別邸に戻ってきた。行きと帰りで全然違うのもまた醍醐味的な部分は否定しないけど、ちょっと大きめなところは全部立ち寄ろうってのもどうかと。


「翔子さん、チョコさん、いいですか?」


「はいはい、どうぞー」


 そう答えると美琴さんと智沙さんが入ってくる。ルナリア様たちはもうおやすみなさいかな?


「箱に手紙とこんな物が届いてました」


「君宛なので確認してくれるか」


 手紙は私が受け取り、こんな物の方はチョコが受け取る。っていうか魔導具だと思うんだけど、見た目はアンティークなカメラっぽい。二眼レフっていうの? なんか数百万しそうな感じのアレ。で、手紙の方はその説明書的なやつかな。ともかく、封蝋を割って中身を拝見。


「えーっと、例のカオスな場所の計測器だそうです。魔石が入ってるので、そこに充魔してから定点観測っぽく設置して欲しいと」


「ふむ。測量のようなことという認識で間違ってないだろうか?」


「ああ、それですそれです。道に三脚立てて測るやつ」


 手紙にも三脚に乗せて設置して欲しいと書かれている。上に乗せるこれを作ったあと、三脚を作る時間が惜しいのでって感じなのかな?


 まあ、こっちにあるやつ使えばいいんだったら、わざわざ作る必要もないよね。


「その計測した情報はどうするんでしょう?」


「えーっと、これに記録されるそうです」


 封筒に入っていたのは五センチ四方、厚さ一ミリほどの金属板。それが二枚入っていて……


「ここに入れるのかな? SDって感じだよね」


「うん、そこっぽいね。入れてから起動ボタンを押すと、裏側のモニターにカメラからの画像が映るので、例のカオスになってる部分を中心に映した状態にして欲しいと」


 これくらいで的な図解が別紙で入っていたので智沙さんにも見せる。多分、私なんかよりずっと上手く設置してくれるはず。


「了解した。急いだ方が良さそうだな」


「そう思います」


「それだけですか? ルナリア様たちのことは?」


 そいやそうだった。ルナリア様たちもそろそろ……って話で戻ってきたんだよね。


「えっと、その金属片一枚で一週間ほど記録できるそうですが、容量がいっぱいになる前に……直接会って話がしたいので、その時にルナリア様も迎えにと」


「直接会って!?」


 思わず反応するチョコ。念願のアイスソード……じゃない、カスタマーサポートさんに会える!


「ふむ。なら、そのことは明日にでも伝えねばな」


「はい。あ、美琴さん。明日、ルナリア様のおみやげを適当に見繕ってもらえます? フェリア様はドライマンゴーがあれば満足だと思いますけど、二人のマウント合戦にならないように、平等に用意してもらえると……」


「はい、任せてください」


 これぐらいかな? あとは明日設置に行く時はサーラさんにもついてきてもらうかな。ルナリア様は特に用事がないならついてこないよね。ダンジョンの中に甘味があるわけでもないし……


***


「ワフッ! ワフッ!」


 ヨミが神樹のある大部屋にきた瞬間、ダッシュで駆け出した。やっぱりここは他よりも空気が澄んでる気がするんだよね。うちの裏山の沢に似てなくもない感じ?


「十分ほど休憩をいれようか」


「そだねえ」


 サーラさんが神樹の根元にゴロンと横になる。ここは天井から淡い光が出ていて、日向ぼっこできる感じ。外の天気と連動してるのかな? というか水はどこから? 等々、謎だらけだけど、まあそういうものかなと。


「この神樹はいつ見てもすごいな」


 智沙さんも機材を下ろし、ゆっくりと座る。機材っていうのは例の魔導具と特製の三脚。ちなみに、送られてきた魔導具にはカメラマウントできるネジ穴がしっかりついてました。こういうのって統一規格なんだと思うけど、こっちの規格をどうやって再現したんだろ……


「ちょっとヨミと遊んでくるね」


「はいはい、ほどほどにね」


 荷物を置いてヨミを追いかけるチョコ。遊ぶ気まんまんでフライングディスク持参で来ました。魔導具を設置した後、智沙さんとチョコとサーラさんが魔素がある状況での練習をするらしいので。置いてけになる私とヨミが遊ぶために。


 ルナリア様は特に面白くもなさそうだということで待機。必然的にマルリーさんも。美琴さんはちょうどいいのでおみやげを二人と相談しますってことに。


「そうそう、今のうちに先にやっとかないと」


 腰の革袋から精霊石を取り出して魔素を注ぐ。水の精霊、神樹の精霊、土の精霊が同居してテラリウムになっちゃってるけど、住人の精霊さんたちは満足してくれてるのかな? 特に土の精霊さんたちは帰りたかったりするんじゃとか。


「えーっと、この樹の向こう側が元の世界だけど、元の場所に行くのは大変かな」


 それなりに通じてるはずだと思うので一応話しておくことに。ミニゴーレムの本体は美琴さんの転送の箱で送り返しちゃったんだよね。


「ん?」


 なんか精霊さんたちが人形になってる件……


「翔子ちゃん……」


「そういうこともあります……よね?」


 サーラさんがナイナイって手を振るんだけど、別に私がそうしろとか言ったわけじゃなくてですね。


「まあ、翔子君なら今さらだな」


「そう言われても返事に困るんですけど……」


 こんなことになるんなら、ルナリア様にも来て貰えばよかった。いや、フェリア様に聞いた方がいいのかな? ルナリア様が帰るときに来るかな?


「どうしたの? って……。うん、そういうこともあるよね」


「あるよね」


「ワフ」


 戻ってきたチョコがフォローしてくれ、ヨミは精霊さんたちの前でお座り。何が始まるのって思ったら、精霊さんたちが背中に乗って遊び始めた。


「フェリア様が見たら卒倒するんじゃない?」


「そうなんです?」


「精霊がそんな感じで遊ぶなんて、妖精の園ぐらいでしか聞かないんだけど……」


 妖精の園ってフェリア様の実家とかかな? ちょっと行ってみたい気もするけど、サイズ的に無理そう……


「ワフ〜」


「はいはい」


 膝の上に乗ってきたヨミだけど、背中には精霊さんたちが乗ってるし、顎下をヨシヨシしてあげよう。って、私の手をよじ登り始める精霊さんたち。


「またそういうことする……」


「アレですよアレ。フェリア様のせい。苦情はフェリア様にお願いします」


 何もしてないんです! なのに勝手に! ってこれカスタマーサポートさんに言うと怒られるやつだからダメだった。


「さて、そろそろ下へ行こうか」


「「はーい」」


 精霊石を両手で持ち上げると帰宅?する精霊さんたち。うーん、やっぱり狭い気がするんだけど、もうちょっと大きな家を用意してあげるべきなのかな……

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