121. 翔子と本番環境?
試運転を終えた三日後、東京の六条邸へと戻ってきた。動作中の水量の増減で少し焦ったぐらいで、一時間弱で魔素を全て水に変えて無事終了。周囲の魔素がなくなると自動停止してくれることも確認できたし。
翌日、翌々日は本当にオフ日を堪能。ルナリア様がまた遊覧船に乗りたいとか、ヨミがまた戦場ヶ原を散歩したいだとか……オフ? まあ、温泉はたくさん入ってふやけてきました。
で、ですね。アイリスフィアに行ってた期間も含めて、アニメの未消化が積もってきてるなーっていう危機感が……
「「はー、ただいまー」」
「ワフ〜」
チョコと二人、それぞれのベッドへと倒れ込む。ヨミが真似をしてるのか背中にペタッと張り付いてて気持ちいい。そのまま足踏みしてくれないかな?
「旅行先も楽しいけど、帰ってきたこの瞬間がまたねー」
「それねー」
そんなだらしない感じでいると、
「翔子さん、ちょっといいですか? って二人とも何してるんですか」
「あ、いや、あはは……」
美琴さん、入る時はノックぐらい……開けっ放しでした。
「ゴーレムちゃんを向こうに送るんですが、カスタマーサポートさんに手紙も送りますよね?」
「あ、そうだった! 急いで書きます!」
「夕食後にしますし、館長とお話ししてからになりますから、慌てなくても大丈夫ですよ」
そう言って去っていった美琴さんだけど、先に書いておかないと気になるんだよね。ということでさっそく。
「準備オッケー」
「ありがと。えーっと、まず古代魔導具は試運転も無事終了しました。かな」
チョコがテーブルにタブレットを広げ、メモアプリにお手紙の内容を書き込んでいってくれる。これを美琴さんにメールして打ち出してもらうだけ。
あと伝えておくのは、ミニゴーレムに憑いてた土の精霊さんは私の方で預かってますよーっていうのと、キッチンダイニングっぽいところにあった物はどうしましょうってあたり? ああ、古代魔道具の座標固定ってボタンは何なのかも聞いておかないとだった。
「翔子君、いいか?」
「はいはい」
智沙さんの『開けたドアにノックする』はカッコ良すぎて反則だと思います。
「御前がさっき帰宅されたのだが、我々に話があるそうだ」
「了解です。ルナリア様たちもです?」
「いや、私たちだけでいいそうだ。後で説明はすると思うがな」
とのことなので、さっそく本邸へと向かいましょう。っと、草稿はちゃんと保存してからね。
***
「戻ってきたばかりなのにわりーな!」
本邸の応接室にはすでに館長さんが座ってて、私たちをにっこりと出迎えてくれる。
「ワフッ!」
「ヨミ〜」
ヨミがダッシュして行って膝に飛び乗ると、館長さんもデレデレに。しょうがないよね、かわいいから!
いつも通り、私とチョコ、美琴さんと智沙さんが向かい合わせで座ったところで、ヨミが私の膝の上へと戻ってくる。熱い緑茶が配られるが、夕食も近いということでお茶菓子はなしかな。
「さて、戻ってきたばっかりのとこでわりーんだが、埼玉の方に手を貸して欲しいと言われちまってな」
メイドさんが退出したところでズバッと切り出す館長さん。あそこで陸自が敗走? 撤退? まあ任務に失敗してから一ヶ月ぐらいだっけ。そろそろ次のアクションをしないとってことかな。
「手を貸すというのは具体的には?」
「突入部隊のバックアップとして待機して欲しいって話だな」
前と同じってことかな? それはいいとして『以上を踏まえた上で』的な作戦を立ててくれてるんだと思うけど……
「今回は陸自はどのような作戦を?」
「そこまでは教えてくれねーな。前と同じ失敗はしねーとは思うけどよ」
そりゃそっか。でも、バックアップだとせっかく借りてきた古代魔導具を使うタイミングが無いような気がするんだよね。と思ってたら、美琴さんがそれを突っ込んでくれる。
「翔子さんたちが取ってきてくれた魔導具は使えないんでしょうか?」
「それに関してなんだが、バックアップの前に現地で準備をさせてくれって感じで行けねーか?」
なるほど。その準備と称して魔素を水に変えてしまえれば、少なくとも魔法が飛んでくるようなことはないか。銃火器だって使えるようになるかもだし。ただ、ちょっと不安な点が……
「それで大丈夫だとは思うんですが、一つ気になってる点があるんです。あの魔導具を動かすと周りの魔素を吸い取るんですが、それに釣られて魔物が近寄ってくるんじゃないかと」
「なるほど。魔物の本能で魔素がある場所に来る可能性はありそうだな……」
あの魔導具を奥日光で試した時、聞いていた通りに地下施設の魔素を吸い尽くしてくれたんだけど、やっぱり周囲の魔素をかなり広い範囲で吸引してるっぽいんだよね。
ルナリア様が『一国の魔素が空になった』とかいう事故のことを話してくれたし、その範囲はかなりあるんだと思う。そうなると、魔素が吸い込まれる魔導具の場所へと魔物が集まって来るんじゃ無いかなっていう……
「あそこにどれくらいの魔物が残っているのかわかりませんが、それが殺到してくるとなるとかなり危険じゃないですか?」
「いや、それを逆手に取って、前に美琴が言っていたような、外に誘き出す作戦を取れるということか?」
「「ですです」」
廃坑の外に出たところからなら、アサルトライフルだって打てると思うし、あとは一網打尽にしてもらえればだけど。
それにどれくらい特殊作戦群の人たちが協力してくれるんだろうって感じかな。普通に考えて「お前は何を言ってるんだ?」って話だし。
「自衛隊の人たちが協力してくれるでしょうか? その、隊長さんのことは知ってはいますが……」
はい、智沙さんのお父さんでしたね! ってまあ、任務は任務としてきっちりタイプの人だったから、逆に協力してくれるなら心強いとも言えるけど。
「まあ、もともと通路に石壁でバリケードを作ってからかな? とか、いろいろ考えてはいたので」
今はマルリーさんにサーラさんがいるし、チョコに守ってもらいつつ魔導護身銃を撃ちまくってれば楽勝なんじゃ? と思ったりも……
「よし、そいつに関してはルナリアちゃんたちとも相談してまとめてくれ。あいつらには前回の貸しがあるからな。今回はうちの要望を聞いてもらうことにしようぜ」
そうニヤリと笑う館長さん。悪い大人って感じでかっこいいんだよねー……
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