(4)サンタクロースの願いごと〜その2〜
サンタ5号は部屋に戻るとありすからの手紙を飾り棚からそっと取り出した。
こどもからの手紙は原則、持ち帰ることなどできない。神様に届けてそのあとは知らない。だけど、どうしても手元にもっておきたかった。サンタ5号は100年前、手紙を一通だけくすねたのだ。まだ、お叱りを受けていないのだから、神様も黙認しているようだった。
サンタ5号は50年くらいはそれに思い悩んでいたし、何度神様に伝えようかと考えた。だけど、手紙が途絶えた今、あの時そうして良かったんだと考えに至ったのだ。
会えるなんて、考えたこともなかった。
サンタ5号はサンタ3号により深く感謝を想い手紙を手に階段を降りていく。
場所は変わってサンタ3号の部屋では、彼自身が散らかした赤い服やアルコール、怪しい粉に水煙草、気づかぬうちに破っていた幻の新聞、食べ尽くしたステーキの切れ端、の中、全て片付けようという気もまるでなさそうなサンタ3号が腰を曲げてシーツのよじれたベッドの下をまさぐっていた。
「えっと。この辺だったと思うんだけどな。ん?これはなんだ。ああ、この間餓鬼からぶんどった金棒だ。違う違うこれじゃない。あ、この箱。ああそうそう、たぶんこれだ」
乱暴に箱をこじ開けると、そこには数粒の宝石にも似かようとても美しい、何色ともとれぬ色をした件の『人間に一日だけ変身できる薬』があった。
サンタ3号は何一つ感動する素振りも見せぬまま、それをふた粒ポケットに突っ込み階段を降り、サンタ5号に手を振った。
2人は満月の夜になると開くという、現実世界への窓へ向かった。
森深い洞窟にそれはあった。怪しげな男とも女とも取れない妖怪達がたむろしており、サンタ5号は足がすくんだ。
「どうしよう、3号くん......情けないけど僕、こわいよ」
震えてサンタ3号の影に隠れたサンタ5号。軽くため息をついて胸を張ったサンタ3号が、
「オラ、お前ら!どけよ」
妖怪達にそういうと、
「ちゃ、ちゃっすサンタ3号さん、すいませんっす」
とパラパラ散り散りに去っていくのであった。
「どうして!?すごいね、3号くん!すごい!」
サンタ5号は目を輝かせて、2人はいざ現実世界へと向かうのであった。
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