第3話 お伽話と魔法
あれから二週間たった。ようやく目が見えるようになった。この二週間本当に地獄だった。目が見えないから聴覚に頼るしかないし、お乳は飲まなきゃいけないし、どんどん私の中の何かを失い続けた。
でもその分の成果は得たと思う。なんとマミーの名前はソフィアというらしい。そのマミーにはメイドがいて、名前はルチア。二人は幼いころからの仲でとても仲がいいみたい。時々冗談を言い合っている。マミーは、今はマミーのパピー、つまり私のおじいちゃんの家に住んでいるらしい。あったことはないけど。
この二週間、いろいろ耳を澄ましてみたけれど、私のパピーはいないみたい。マミーとルチアの会話から死んではいないみたいだったけれど、一緒には住んでいない。どうしていないのかは二人とも話していないからわからないけど、あんまりいい話じゃないらしい。
「お嬢様、ルチアめが参りました。」
「あぅあぁう!(よしこっちへ来るがよい!)」
「失礼します。」
ルチアがそう言って私を持ち上げる。マミーは週四日、おじいちゃんのところにお手伝いに行っているらしい。いまだにおじいちゃんが何の仕事をしているかは聞いたことがないけれどもいつか分かるだろう。
「お嬢様、今日は何しましょうか。」
「あぅっ!(わからん!きめてくれ!)」
「では、読み聞かせをしましょうか。」
「あーぅ!(我に聞かせるがよい!)」
「では...」
昔々、この世界には神と悪魔、それに精霊がまだ地上に顕現していました。
我々の絶対神、ア二ドラは他の神々をまとめこの世界を治めていました。
ある時、神々は自分たちで何か創造しようと、人間をお創りなさいました。それに続き悪魔は魔族、精霊はエルフを創りました。神々はそのあと、ドワーフ、獣人、小人族、巨人族をお創りなさいました。
しかし、悪魔による神々への攻撃が始まりました。
悪魔は魔族を使い神々が創造した種族へと攻撃を仕掛け、神々を殺し、自分たちが世界の支配者になろうとしていました。
地上では悪魔によりあらゆる種族が蹂躙され、常に叫び声や嘆き、憎しみで世界が満たされていきました。
そんな時、神々は異世界から聖女を召喚しました。また、この世界から勇者、賢者、騎士を一人づつ選び、悪魔を討伐する部隊がつくられました。
この戦いで小人族と巨人族は滅びましたが、彼らは悪魔どもを倒し、名声を得ました。
しかし、これだけでは終わらなかったのです。
悪魔は神々を呪い神々のお創りになった種族にある魔法をかけました。その魔法は神々でも解けず、永遠に人々に受け継がれることになったのです。
その魔法は子供を魔族に変える魔法でした。
悪魔は人々を魔族に変えることで、魔族を増やし、いつの日か神々を殺し、この世界を手に入れることにしたのでした。
神々はこの魔法にかからないように人々にある魔法を教えました。
それは、生まれたばかりの子に加護と名前を与え、悪魔の手から逃れることでした。
それ以降、神々に魔法を教えられた人々は、自分の生まれたばかりの子に自分の加護と名前を与え、悪魔の進行を抑えることに成功したのです。
「どうでしたか、お嬢様。」
「あうっ!ああーぅうあっ!ああぅあっ!(こっわ!何で!悪魔とかいんの!?まじこっわ!)」
「そうですね、まだお嬢様にはお言葉がわかりませんよね。でもこれは、大事なことなんです。実際に加護や名前を与えられなかった子供は体の形が変わり異形のものへと変化してしまうのです。お嬢様がお言葉がお分かりになられるようになるまでお話し続けますね。」
「あーぅ...(まじかよ...)」
体が変化するとか何の病気だよー。感染症かなんかなのかな。体が変化するのはその感染症のせいとか。加護と名前が与えられないと変わるってどんな感染症やねんっ!まぁ、私はもう与えられてるからいいんですけどー。
「何して遊びましょうか、お嬢様。奥様が帰った来られるまでにまだ時間がありますね。」
「ああーぅぅ。(おぬしが決めてよいぞー)」
「では、これはいかがでしょう。」
「あーぅ!(何かなー)」
「私の手のひらをご覧になっていてください。」
「あぅ(うむ)」
「火の神フォテルノよ。我にかすかなともしびを。『ライト』」
ポゥ。指先が光った。ゆらゆらと炎が揺れている。
え?
「どうですか、お嬢様。すごいでしょう。」
E?
「これは魔法といって、いろんなことができるんですよ。いずれお嬢様も使えるようになります。」
ええええええええええええええええええ!!!
「私の魔力では精々一時間しか灯すことしかできませんがお嬢さまは私より多くの時間灯すことができるでしょう。」
ま!魔法だって――――――!!!
そんなことされたらあたし、あたし!!
ポト。
「お嬢様?!どうなさいましたか?!お嬢様ー!」
気絶してまうぞやろがい。
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