第2話 転生した?

 死んだのか...って、ここドコよ。さっきの話の内容から黄泉の国?とは到底思えないし、誰かが生まれたみたいな話をしなかった?黄泉の国は生命が誕生する設定があったのかな?


「ホントにかわいいわ。このまま何事もなく健やかに育ってくれると嬉しいのだけれど。」


「私もそう思います。ですが奥様、まずあなたのお体を休めませんと。産後の肥立ちが悪く亡くなられた方は多くいらっしゃるのですからね、さっ、お嬢様をこちらに。」


「いやよ。まずはこの子が寝ないと。せっかく私のところに来てくれたのだし、頑張った分しっかり休まないとね。」


 とんとんと誰かが私の背中が叩いている。とても心地いいリズムだ。昔、眠れないときにお母さんが背中をトントンしてくれたのを思い出す。ふぁ~あ...少しだけ眠っていいよね...お、おやすみなさ...ぁぃ。zzZ~


「ところで奥様、先ほどの光。あれはもしや...」


「静かになさい、ルチア。先ほどのことは誰にも話してはいけないわ。この子を守るって言ってくれたじゃない。あれは嘘だったの?」


「いえ、あの言葉に嘘などはありません。」


「では、話さないでね。お父様にもよ。お父様は信頼できるけど、どこでこのことが漏れるかわからないわ。」


「かしこまりました。」


「絶対よ。この子は誰にも奪わせたりしないわ。あの人にもね。」



 ふぁ~あ、よく寝た。ん?ここドコだっけ?思い出せ私!

 そうだ、私死んだんだっけ?で、金色の光が見えて...寝てしまった...なんて軟弱な精神なんだッ!こんなんじゃ兄ちゃんに絶対殺される~!あぁ、筋肉を見せつけながら眉間にしわよせる兄ちゃんが見えるよ~!兄ちゃんはあの記憶の後、なぜか筋肉魔人への道を究めジムのインストラクターとなったのだ。あれはもはや人間の域を超えているっ。ウ~ぶるぶる。 


 さて状況を確認しよう。私はあの火事で確かに死んだ。それなのに生きている。もしかして生きてた?いやそれはないな~。天井が崩れ落ちてきた時点でだいぶ火が回ってたし、生き残ることはまず不可能だろう。それにさっきの女性たちの会話が気になる。赤ちゃんが生まれたとかなんとか...あっ、もしかして私赤ちゃんに生まれたとか?もしかしたらもしかしなくもない。


 なんとなく手は動かせるけど、とにかく目が見えないからどんなとこにいるのかわからない。ただ、全く見えないというわけではなく、光の認識はできるみたい。さっきも金色の光を見たし、光の色の判別は何となくできると思う。赤ちゃんは生後1か月後まで目が見えないということもあるようだしすぐに自分の全体を把握することは難しいかな。


 じゃあ、周りの会話から情報を集めていくしかないか。なんか刑事になった気分だな~。よしっ、聞き込み調査を始めるっ!


「私の赤ちゃん、お乳の時間ですよー。」


 ちょうどいいとこに誰か来た!この声は私が生まれた?時に聞いたことがある。この人が母親なんだろうか?待って!お乳だと?!聞き込み調査にそれは入っていない!


「上手に飲みましょうね。私もお乳を上げるのは初めてだけれど、あなたが上手に飲めるように頑張るわ。」


 心地のいい声がする。少し高い伸びのいい声。話し方もお淑やかだし、いかにもいいとこのお嬢様って感じがする。でもちょっとお乳は勘弁してください。いくら同性といっても、モノには限度がありまして...あっ!ちょっ、心の準備が!あぁっ、ああーーーー!!



 終わった...何かが終わった...いつの間にか自分でせっせと飲んでいたし、もう両親に顔向けできないっ!...もう死んじゃってるけど☆


 前の時は自我とかまだ芽生えてなかったし、羞恥心とかなかったけど、いざ終わってみると恥ずかしくてしょうがない。これをあと何回繰り返すことになるのやら...トホホ。


 とにかく、女性が私の赤ちゃんといって、お乳を飲ませてきたのだから、私が生まれ変わっているのは確実だ。




あとは目が見えるようになるまで待つしかない。


 

 



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