お洋服を作りましょうっ!
Lopp
第1話 金色の光
んっ、ううぅん?
なんか目が開かない。しかも体中がネチョネチョする。うぅっ、気持ち悪い。ちょっと寒い、えっちゃん毛布をもう一枚かけてくれ。そうそう...。いやっ違う。そんなごわごわな奴ではなくてもっと気持ちいふわふわのを頂戴。あっ、いや擦るのではなくて...。うわっ、あったかいけどこれ液体だよ。何で朝からをか水けられなきゃいけないの。
「奥様、立派な赤ちゃんですよ。抱いてあげてください。」
「ルチア。まぁ、なんてかわいい子なの。髪の色はあの方に似ているのね。目は私かしら...ところで、ルチア、赤ちゃんとは産声を上げるものではありませんの?」
「そのはずです。ですが息をしておられるので、大丈夫なのではないでしょうか。」
「そうなの?でもお医者さんには見せられないし、困ったわ。息をしているなら大丈夫かしら?ねぇ、ルチア。この子の名前はあなたがつけて頂戴。」
「奥様...いいのですか?旦那様が戻られてからでもよろしいのではないでしょうか?私ごときがつけてしまったら旦那様に叱られますし、何より奥様のお子に何か不吉なものがついてしまったらどうしましょう。」
「ふふっ、ルチアったら、不吉なものなんてつかないわよ。それにあの人には私が後から言っておくわ。それに....自分の娘が生まれたというのに、ここにいない人の言うことなんて聞く必要なんてないわよ。」
「...奥様。」
「そんな辛気臭い顔なんてしないの。あなたとは親友じゃない?早くつけてくれなきゃ怒っちゃうわ!」
「奥様...わかりました。このルチアが名前を付けさせていただきます。」
「いい名前を付けてね。悪い悪魔がこの子をさらってしまわぬように。精霊に魅入られてしまわぬように。神様がこの子を守ってくれますように。」
「あなたが自分で身を守れるようになるまで私たちがあなたのことを守ります。『糸』の担い手・ルチアが命名する。メルティナ・アーリヤス・ドラクーン。あなたが良き人生を送れるように͡この名を授けましょう。」
そう誰かが言い終わると、金色の暖かい光が周りに広がった。相変わらず目は開かないけど、なぜか金色の光というのは分かった...ってか!ここドコっ!話の内容から聞いてる通りだと、ここ家じゃないじゃんっ!
よし。思い出せ、いつみ!!お前の記憶力を引き出すんだッ!いくよっ。ミョーン、ミョーン、ミョーン......きたッ!なんかきたっ。
そうあれは...
―見ろよ!これがっこの土地に伝わるおおおザリガニ様だ!かっけーだろ!
―スっゲーーー!兄ちゃんかっけー―ー!おがいっぱいだ!
―だろーーー!崇め奉るがよい!
―ははーー
―コラーーー!カツミ、いっちゃんに変な事させないで!ていうかまたおかしな言葉の覚え方して!いっちゃんは女の子なのよ!!
―ゲッ!母ちゃんだ。イツミ逃げろッ!
―にっげろー
―待ちなさーい!
うわっ、懐かしい。小さい頃は兄ちゃんと馬鹿やったなぁ。って、いやいやこの記憶は違う!次!
―佐藤さん、ごめん別れよ。
―何で?!まだ付き合って一か月じゃん?!
―だって、佐藤さん僕のことに興味ないでしょ。いつも服、服って、僕がいなくても別にいいよね?
―ちゃんとたく君のことも好きだよ!それに手だって繋いでないじゃん!何がダメなの?!
―じゃあ洋服作るのやめてくれる?
―え?何で?洋服作るの楽しいじゃん。
―....そういうとこだよ。だから僕はきみが嫌いなんだ。じゃあね。
―えっ?ちょっ、待って!待ってよ!
ううっ。これ初めてできた彼氏に振られた時だ。思い出したら悲しくなってきた...ってこれも違う!次!
―ねえ、いつみ。
―なぁに、えっちゃん。
―今月のノルマきつくない?何、二十着のデザイン画を来週までって?無理やろ。まだ十着しかできてないっちゅーの!!あの店長頭のねじ飛んでるよ!
―まあまぁ、店長もそこまで期待してないよ。こうなったらいいな精神でノルマ課してんだよあの人。
―何でいつみは楽しそうなの?ついに頭おかしくなったんだね?
―私はいたって正常だよ、えっちゃん。
―いーやっ!おかしいんだって!だから、ねっ?一緒に明日有給とって病院行こう!うんっ、決まりね!
―えっちゃん...もともと明日は土曜で定休日だよ。しかも月曜からは”来週”だよ?
―.......じゃあ月曜有給使うわ。
―えっちゃん、手伝うよ...。
―いつみ...ありがとう。
これだっ!自分でも服のデザインができるっていうアパレルに就職したときにすぐに親友になった同僚の山崎恵理。彼女とはショップ近くのマンションで一緒に暮らすほど仲良くなった。いつも道理えっちゃんの愚痴を聞いていた。これが一番近い記憶。だけどこの後どうなったんだっけ?
―いつみ!!!
―えっちゃん.....
―いつみ!おきてよ!早く逃げないと、火にまかれちゃう!
―えっちゃん。聞いて...
―でも...
―わかるでしょ、足、挟まれちゃった...早く逃げないといけないのはえっちゃんの方だよ。
―でもっ!!!
―わかってよっ!もう無理なの!逃げられないの!だからせめてえっちゃんだけでも逃げてよ!二人とも死んだら一緒に考えたデザインはどうなるの?お願いだから逃げて...
―いつみっ!こんなのどうでもいいよっ!いつみがいなければあたしどうしたらいいの?一人ぼっちになっちゃうよ!
―っっつ!バイバイ、えっちゃん。
―いつみーーーーーーー!!!
そうだ、あの後火事が起きて、えっちゃんと徹夜で仕上げたデザイン画だけ持って逃げたんだ。でも私は足が落ちてきた天井に挟まっちゃって、えっちゃんと話してる間にまた天井が崩れる音が聞こえたからえっちゃんに落ちないように突き飛ばした。そして、私は...
私は、死んだんだ。......
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