お題:架空の長編の3話
「お日柄はいかがですかマスター?」
と、自分のペアとして
「お日柄はいいが何か用?僕は今寝起きなんだ。しかも事後処理でろくに寝てない」
「良好な関係を築くためにはとりあえず接触・交流回数を重ねろ、と係長(リーダー)からの命令です。そうですね、起床したばかりとなれば朝食の作成を私がいたしますがどうなされます?」
「別にいらない。朝に手の込んだものを食うのは趣味じゃない」
「そうですか……。となると世間話とかはどうでしょう」
「それも僕の趣味じゃない。まぁ君には少し話したい事がある」
「私に把握出来る事ならば答えましょう」
「戦闘時に見た君の姿といい研究所からの出向という立場といい……君の能力といい、きな臭い。銀の影だろう?」
『
僕の故郷である天香町では彼女が仕込まれた命令文により変異・暴走した結果として神性の顕現とそれに伴う災害が起きており、彼女は最終的に討伐された。そしてその際、彼女という魔導書に秘めていた数々の現代科学の産物にも通ずる高度な魔術的機構などが、解体・研究されたのだ。
今こそ偽装されて金髪碧眼だが、彼女が戦闘時に見せた銀髪赤眼や顔つきは、その書物の人態に似た容貌をしているのみならず彼女が発揮した能力も通常の魔術師の能力をはるかに越えていた。
明らかにその魔導書との関連を疑わずににはいられない。
「肯定です。私は彼女の擬人外装の情報より作られた、錬金術式人造生命(ホムンクルス)。彼女が持つ魔力運用能力とその負荷に耐えうる肉体強度に着目し、魔力による形成ではなく三次元上の物質としての安定精製を目的とした計画によって作られた最新型にして完成形、と私は自らの脳に記憶しています。」
と、彼女は製品を読み上げるように答える。
「だろうな」
「質問を返しましょう。マスターは『銀の影』について何か関心はおありでしょうか?」
「仮にも自分の故郷にろくでもない事を起こした奴らの欠片だ。ないと言えば嘘になるが、感情はない」
むしろ本体については自分の家を潰してくれて清々とすらしている。僕にとってあの町はともかく、僕の一家にろくな思い出はないからだ。
「貴方の名字と、私が認知している情報から照合するに貴方は名門の一家であり、噂では自らの魔術によって『人間の究極』を作るという命題を持つ者もいる古株の陰陽師一族の『星御門家』ですね。貴方もその命題に関わりがあったのですか?」
「僕はただの途上……前座の一人だ。それ以上でもない」
「言葉の詰まりと表情から良くない記憶があったと想定されます。もしかして貴方は、魔術師の家系に稀に見られる、『トロフィーチルドレン』ですか?」
「トロフィーチルドレン?」
「いわゆる、『実験結果』としか見られない子供です。魔術による品種改良的行為で生まれた子供に見られるものであり、成功が確認されると途端に親がネグレクトを行うことは魔術師の親にはあります」
「……」
「気分を害されたのならば謝罪をします」
「とりあえず、外で話すか。外の空気が吸いたい」
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