追放された防御役(タンク)は神盾の祝福者! ~そしてSS級勇者は没落していく!

どくどく

追放された防御役(タンク)は神盾の祝福者! ~そしてSS級勇者は没落していく!

「ゼクス、防御しかできないお前はクビだ」


<勇者>アレクは、<聖騎士>ゼクスにそう言い放った。


「な、何を言い出すんだアレク!?」

「何を、じゃねぇよ。俺達は国に期待されたSS級の勇者パーティだ。魔王を倒すために五大国家から期待を受け、支援さえ受けている。いわば世界の期待を背負っているんだ。俺達が魔王を倒せなければ、世界は終わる」

「ああ、分かっている。だから俺は皆を護ってきたんだ。

 いや、国や世界の為と言う事もあるが、俺はお前達の仲間だから守ってきたんだ! なのに何故!?」


 アレクの言葉に、心外だと叫ぶゼクス。

<聖騎士>として名を受け、<勇者>に従う。最初は国の名誉と言う事もあったが旅を続けるうちにそれよりも仲間としての友情が勝ってきたのだ。


「決まっている。お前が防御しかできない役立たずだからだ。

 この前の戦いだってお前は盾を構えているだけ。実際に魔物を倒したのは俺とバーバラだ。クレアだって魔法で倒したと言うのに、お前は一匹も魔物を倒していなかっただろうが!」

「それは当然だろう! 俺は防御役タンクだから、皆を守るのが役割だからだ!

 皇帝炎龍カイザードラゴンのブレスを俺が防がなければ、全滅していたんだぞ!」

「それぐらい、私の魔法布術で防げたわ」


 そう告げるのはクレアだ。<賢者>にして<聖女>。このパーティの回復役ヒーラーにして補助魔法使いバッファー。攻撃魔法も使えるが、基本は守りに徹する役割だ。


「私は回復も防御もこなせるの。ゼクスの存在は無意味なのよ」

「いや、待ってくれ! クレアが如何に天才でも回復魔法と防御魔法は同時にできないだろう? 誰かが守らなければ、手が足りなくなる――」

「違うわ。そうなる前に相手を倒せばいい。手数はあたしが稼ぐわ」


 言い募る言葉を遮るのは、<国士無双>のバーバラだ。格闘家として最高峰のジョブを持つ彼女は人類最速にして最強の格闘技術を持っている。魔物が一つ動く間に三度拳を叩き込むことが出来る。

 そして同時にゼクスの幼馴染でもあった。アレクに共にパーティ誘われ戦ってきた。互いのクセも熟知しており、言葉なくとも通じ合っていると信じていたのに……。


「駄目だバーバラ! お前がどれだけ強くても、魔物は人間の常識を超えてくる! 慢心したらダメだって自分で言っていたじゃないか!」

「慢心じゃない。事実よ。貴方はもう要らない」

「……っ!? 俺はお前達のことを本当の仲間だと思っている。お前達もそう言ってくれたじゃないか! あの言葉はウソだったのか!?」


 必死に叫ぶゼクスの言葉。しかしそれに皆が首を縦に振る。


「仲間ぁ!? お前はバーバラのおまけ程度にしか思ってなかったぜ。精々が、都合のいい壁程度だな」

「硬いだけの存在はもういいわ。防御役なら私がこなす。汎用性のない人間は消えなさい」

「そういうこと。さよなら、ゼクス」

「ああ、その装備はおいていけ。それも勇者の財産だからな。売って金にでもするさ」

「…………わかった。皆、頑張ってくれ」


 言い返す気力も折れたのか、ゼクスは装備一式を置いて勇者たちに背を向ける。

 扉を閉める。扉越しに聞こえる笑い声。それを聞きながら、ゆっくりとゼクスは勇者たちから離れていった。






























「…………行ったか」


 ゼクスが宿から出て、街の門を出たのを窓から見送ったアレクは静かに呟いた。

 もう戻ることのない親友を想うように。


「そうね。この後ゼクスは山賊に襲撃される開拓者に出会うわ。それを助けて村の開拓に手を貸すことになる。……今まで私達を助けた『神盾の祝福』を活かして」

「もともと面倒見のいいヤツだったからね。気配りも聞くし、きっと上手くいくよ」

「だな。その方がアイツにとって幸せなんだろう」


 アレクは勇者のスキル<神託>により、ゼクスの可能性を神から聞いていた。

 ここでゼクスと別れたら、彼は一つの村を開拓する。その村はいずれ魔物を受け入れ、人と魔の懸け橋となる。魔王と戦う戦乱の世を終わらせるきっかけとなるのだと。

 それを聞いたアレクはバーバラとクレアに相談した。そしてクレアの水晶玉を用いた<未来視>によりその情報を共有し、そして――ゼクスを追い出すことに決めたのだ。


「勇者の俺じゃなく、村を開拓するアイツの方が世界を救うんだ。その方がずっといいさ」

「ですが、ゼクズが抜けた穴は大きいです。<未来視>が正しければ、この後私たちは無残に没落していくと」

「だろうよ。それだけゼクスはすごかったんだ。そんなの、みんな分かってるさ」

「ホント、守って当然って顔してるんだもんね。昔からそうなんだもん」

「……お前らもアイツについていっていいんだぜ。特にバーバラ、お前はアイツに――」


 アレクは静かにバーバラとクレアにゼクスを追うように告げる。

 だが、二人は躊躇なく答えた。


「滅びの運命が見えても戦い続ける勇者に付き添うのが、聖女の努めです」

「苦難に挑むのが格闘の道。……それにさ、あんな顔して笑うゼクスを見たんだ。諦めもつくよ」

「そうか……すまんな」


 如何に未来に平和が待ち受けているとはいえ、今現在の脅威を放置はできない。それがアレクの戦う理由だ。

 そしてそれに共感した仲間がいる。


「それじゃあ『ミームング』、出発だ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ゼクスはその後、廃村にたどり着きそこで出会った者達との交流により心を癒す。そしてその絆が魔を退けることとなるのだ。


そして彼が抜けた『ミームング』は衰退の道をたどるのであった。

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