第3話 ご主人様?
僕の名前はアルフ、数日前からそう呼ばれてる。
本当の名前は……まぁ、2人がそう呼ぶんだから、しばらくはアルフでいいニャ。
1人旅を楽しんでたんだけど、どうしても一緒に暮らしてほしいと頼まれて、共同生活を送る事になったニャ。
一緒に暮らしてるのは『執事の広』と『世話係の咲』、この二人ニャ。
二人は何故か僕に触れたがる。構ってほしいのはわからニャいでもニャいけど、陽だまりでくつろいでるのを邪魔するのは、勘弁してほしいニャ。
トイレの掃除や食事の用意をしてくれるから、少しぐらいニャら構わニャいけどニャ。
僕がここに来てからずっと、二人は遅くまで話し込んでるニャ。
ご主人の僕を放ったらかしてヒドイ話ニャ!
その時間に、ココを探検してたからいいけどニャア
だけど、朝まで僕を無視して二人で寝てるなんて許せないニャ!
「アルフ~、ご飯の支度できたぞ」
広が呼んでる、やっと朝食が食べれるニャ。
体は大きいクセに、食事の支度に時間がかかり過ぎだニャ。教育が必要だニャ。
「広~、私たちの朝御飯もできたよ~」
「わかったよ、すぐに行く」
「アルフもおいで~」
「ニャア」やれやれ、仕方ない二人だニャ。
今まで食べてたのと同じゴハンだ!美味しいニャ♪
広も、時間がかからなければ、いい腕してるのにニャ。
食後の運動に付き合ってもらうニャ。
「どうしたんだ、アルフ?おかわりか?」
「ニャアニャア」何で僕のやりたい事がわからニャいかニャア。
「遊んでほしいの?」
「ニャア!」そうニャ!遊ぶニャ!
「アルフ、おいで」
「ニャ~ン」わ~い♪
「アルフの奴、咲にずいぶんとなついてるよな」
「だって名付け親だもん。ねぇアルフ?」
ゴロゴロゴロゴロゴロ…。
「気持ち良さそうに眠ってるよな」
「私の膝の上取られて悔しいの?」
「!!バカ言え!」
「何怒ってるの?……ふふ、図星だったニャ?」
「そ、そんなんじゃない。何で俺がアルフにヤキモチ妬かなくちゃならないんだよ」
「ホントかニャア?」心を見透かすように咲は広を見つめる。
「……」
「素直が一番だよ、広?」
「……うるせい!」
「逆ギレは良くないニャア、広君」からかうように咲は微笑みかける。
「俺は……仕事遅れるからもう出るよ。戸締まりと火元の確認はちゃんとしてくれよ」
「わかってる、いってらっしゃい」
「ああ、いってきます。アルフの事頼むぞ。それと……」
「それと?」
「……帰ったらいない、なんてのは勘弁してくれよ」
「寂しいの?」目を細め意地悪く微笑む。
「いなくなるなよ!」怒るようにそう言うと、広は玄関へと姿を消した。
「アルフ、ごめんね」咲は膝からアルフを下ろすと、広を追いかけた。
「ニャ?」ヒドイニャ!気持ち良く寝てたのに……クッションに行こうかニャア。
広が出かける時間みたいだニャ……送り出すのも主人の役目ニャ!
「アルフ、見送ってくれるのか?可愛いヤツだよな、お前って」そう言うと、広はアルフの頭を撫でた。
「ニャン」広!強く撫ですぎニャ!もっと優しく撫でるニャ!
「広……気をつけてね」
「いってきます」
「いってらっしゃい、広」二人は軽くキスを交した。
「ニャア!」僕には?二人とも、僕には?また無視ニャ!ヒドイ!ヒドイニャ!主人をないがしろにしてるニャ!
「アルフが騒いでるぞ」
「ヤキモチかニャ?アルフ?」咲は足元で鳴き続けるアルフを抱きかかえた。
「ニャ?」僕には?してくれニャいの?
「ほら、アルフ。広が稼いできてくれるからね」
「ニャン?」稼ぐ?何をニャ?
「いってらっしゃ~い」咲はアルフの前足を持つと、バイバイするように動かした。
「ニャ!」何するニャ!
「いってらっしいがわかるのか?アルフは賢いよなぁ」
「ニャア」当たり前ニャ!
広はもう一度キスをすると会社へと向かった。
足音がするニャ、広の足音だニャ。出迎えてやるニャア。
「アルフ?…広が帰ってきたの?」
「ニャア」わからニャいの?咲は?
「本当に賢いコだよねぇ」咲はアルフを抱き上げると玄関に向かった。
「ニャアニャア」僕は賢いに決まってるニャ!
「広が帰ってきたのが嬉しいのね、よしよし」咲はそう言うと、アルフのアゴを撫でてやる。
「ニャ~……ゴロゴロゴロゴロゴロ」嬉しい?違うニャ!くすぐったいニャ……何怒ってたんだっけ?……気持ち良いニャ。
「ただいま~」
「おかえり」
「アルフとお出迎えか?」
「新妻みたいでしょ?」
「…」
「何赤くなってるの?ねぇ、アルフ」
「ニャア」早くゴハンにするニャ。
「アルフもこう言ってるよ。うん?広……何想像して赤くなったのかニャ?」
「想像?」
「素直が一番ニャ!ほれほれ、白状するニャ!」
「ニャア?」咲は何をしてるニャ?撫でる手が止まってるニャア。
「アルフも知りたいみたいだぞぅ」
「夕食は?」
「アッ!話そらした!つまんないの~。アルフ、ゴハンにしよっか?」
「ニャン」ゴハン♪ゴハン♪早くするニャ!
「俺のは?」
「自白したら食べさしてやるぞ?さぁ白状するニャ!」
「ニャア!」早くゴハンにするニャ!
「……咲、俺と結婚してくれないか?」
「やだ」
「!?なんで?」
「わからない?」
「結婚しよう」
「私は……この前話した通りなのよ?」
「関係ないさ。咲、俺と結婚しよう」
「いいの?」
「何が?」
「……私で」
「バカだな……俺は咲じゃなきゃダメなんだよ」
「ニャアニャア」早くゴハンにするニャ!ご主人様の命令ニャ!二人とも早くするニャ!
二人は顔を見合わせ微笑むと、リビングへ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます