第5話 エイミとミルディ
「それでその復興プロジェクトはどうなんだ?できそうなのか?」
アルドがエイミに向かって尋ねる。仮想劇場での騒動を終え、アルド達は損傷が激しいミミちゃんを直すためセバスちゃんの家へと来ていた。
「そうね…まだ金額も完全に足りるわけではないし…やることは沢山あるでしょうね。課題は山積み…ってとこかしら。」
「でも…ゼノ・ドメインみたいな大型ネットワークを使えばプロジェクトの事が更に大勢の人に広まるでしょうし、少なくともこれほどの反響があれば極秘裏に立てられていたKMS社の計画は頓挫すると思うわ。」
「そうか…色々大変かもしれないが、ひとまずいい方向に向かってて良かったな。」
まだまだやるべき事は多いが、これで遊園地がKMS社の施設になる、という事にはならないだろう。ひとまず安堵したアルドだった。
「それにね…あの遊園地の為に何かした事が大事なのよ。」
「ああ…その通りだよ。」
エイミの言葉に園長が反応する。
「…正直私はあの遊園地の事を諦めていた。もはや何もできない、とね。」
「全く情けないことだよ。自分の事業の事なのにね。でも…皆さんに会ってようやく分かったんだ。大事なのは…少しでも行動を起こす事だとね。」
「…皆さん。本当にありがとう。」
そして園長は深々と頭を下げた。いいよ、気にしないでくれとアルドが微笑む。リィカはどういたしまシテと言う代わりのように、自慢のツインテールをぐるぐると回した。
「…よし!これでもう大丈夫ね!」
セバスちゃんの修理が終わったようだ。あれほどボロボロだったミミちゃんはすっかり綺麗になり、マスコットキャラクターらしい愛らしい見た目をしている。
「ありがとうセバスちゃん。いつもお世話になってるわね。」
「まったく…私は何でも屋じゃないんだからね。まあ…あのトト・ドリームランドの機械をいじる経験ができて良かったけど。」
「あっそうだ。一応また何かあったらいけないから…ミミちゃんの機能は停止させたままだからね。」
「ああ…分かった。私はミミちゃんを自宅に連れて帰るよ。」
また遊園地が復興した時の為に。ミミちゃんに会えることを楽しみにしている人達が沢山いるのだ。
「だったら園長さんの家まで送っていくよ。いいだろエイミ?」
「ええ。分かったわ。ミルディも行きましょ。」
ミミちゃんを連れてセバスちゃんの家を出たアルド達は、園長さんをラウラ・ドームへと送っていった。
「君達には本当に世話になったね。ありがとう。」
アルド達はミミちゃんを園長の家の中まで運び出した。ミミちゃんはどっしりと家のソファに座っている。
「まだまだやる事は沢山あるが…きっとトト・ドリームランドを復興させてみせるよ。なあに。こんなに沢山の人に応援されているんだ。きっとできるさ。」
「ああ。楽しみにしてるよ。頑張ってな。」
「うん。きっとまた行ける日を待ってるわ。頑張ってね。」
「遊園地…拙者にはよく分からぬが何やら楽しみでござる!園長殿も達者で。」
「もし遊園地が復興したラ…コーヒーカップに乗りたイデス…!園長サン頑張っテ!」
「私も1人のファンとして期待しておくわ。頑張ってね。」
「…じゃあね。ミミちゃんもまた。」
「大好きよ。またね。」
エイミとミルディがミミちゃんに向けて小さく話すと、ミミちゃんを抱きしめる。そしてそれぞれ園長に応援のエールを送り、アルド達は園長の家を後にした。
***
辺りはすっかり夜になっている。アルド達は合成鬼竜へと乗り込んだ。
「さてと…用事も終わったし。私は帰るわ。」
合成鬼竜に乗る前に、ミルディがエイミに別れを告げる。ミルディはクロノ・クランのメンバーであり、おそらく自分達とはまた違ったやるべき事が沢山あるのだろう。
「じゃあね…エイミ。」
「…待って。ミルディ。」
帰ろうとするミルディを、エイミは引き留めた。
「あの時…仮想劇場で直接言えなかったから。今言うわ。」
「いつか必ずあなたを…あなた達を絶対に連れ戻してみせるわ。あの革命グループから。」
「そしたらまた…昔のように皆で…。」
「あなたは今でも私のかけがえのない友達だから。そうでしょう…?」
エイミの言葉にミルディは黙った。そして何か考えたかと思うと、そっと体を宙に浮かせていった。
「…エイミ…大好きよ。」
「あなたはずっと私の友達…覚えておいて。じゃあね。」
そう言うとあっという間にミルディの姿は空へと消えていった。
***
「これでよかったのか…?エイミ。」
「…うん。またあの子とはすぐ会える気がするし。それに言いたい事が直接言えたから良かったわ。」
そう言うエイミはどこかスッキリした様子だった。
「アルドもリィカもサイラスも…迷惑かけたわね。本当にありがとう。」
「なあに。これくらい大したことないでござるよ。」
「アンドロイドの力を存分に発揮できまシタ!」
「なんか凄く大きな事件になったけど…無事に解決できて良かったよ。」
少しも恩に着せようとしないアルド達を見て、エイミは良い仲間をもったなとしみじみと思うのであった。
「いつかトト・ドリームランドが復興したら、皆で行こうね。」
「そうだな。オレも遊園地は体験したことないし。楽しみだ。」
「コーヒーカップ、メリーゴーランド…遊園地には魅力がいっぱいデス!」
「拙者はよく分からぬが、じぇっとこーすたーというヤツには乗ってみたいでござるよ。」
「ぷっ…あはは!そうね。楽しみにしましょう。」
想像して思わずエイミは吹き出してしまった。サイラスがジェットコースターに乗っている姿はなかなかシュールなものだろう。また少し楽しみが増えたエイミだった。
「それにしても…合成鬼竜に乗ってると、星がよく見えるよなぁ…」
「そうね…本当に綺麗。」
「あっ…あの星…。まるで…」
空には二つの星が寄り添うように一際輝いていた。
おわり
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