第8話

タケシと会った数日後、私は彼氏が誰かに殺されたことを警察から知らされた。最近、忙しいと嘘をつき会うことを拒み続けていた恋人とは、永遠に会うことも話すこともできなくなってしまった。警察に詳しく話を聞くと、昨夜の仕事帰りに暴漢に襲われ、そのまま帰らぬ人になってしまったということらしい。犯人はすでに捕まっているらしいが、恋人とは面識はなく殺害動機も不明ということだった。


警察が教えてくれる限りでは、

「誰でも良いから殺してみたかった。自分の人生には夢も希望もないし生きる気力もないから、一番量刑が重い殺人で捕まれば一生、国のお金で暮らしていけると思った。」

とだけを何度も何度も繰り返しているだけらしい。


『なんで、ユウトが。』

私は恋人のユウトが殺されたショックから立ち直れずにいた時、タケシから『明日の14時に、喫茶店で殺人依頼を引き受けてくれた連中の一人と会うことになった。』と連絡が入った。


『まさか、タケシが殺しの対象として選んだのって。』

私は真相を確かめたい一心で、タケシに電話を掛けた。


「もしもし?」

「タケシ、連絡ありがと。今から少し会えない?」

「今から?どうしたんだよ急に?電話じゃダメなのか?」

「うん、電話じゃなくてどうしても会って話したいことがあるんだ。」

「今から二時間後に俺の家の最寄駅まで来てくれるなら、少し時間取れるけど。」

「分かった。じゃあ、二時間後に駅まで行くね。」


私は電話を切ると、涙で赤く腫れ上がった目を隠そうと化粧を始めたが、隠しきれるわけもなく、諦めてサングラスをして出掛けることにした。

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