第7話

私は今回のワンコイン殺人依頼の仕組みを作った人間に復讐するための計画を立て始めたが、一番最初から大きな壁が立ちはだかった。私はプログラミングなどに精通している訳ではないからハッキングなどはできない。相手と全く連絡が取れない現状では、相手の素性を知ることすら出来ない。そうなると、相手の素性を知るためには、もう一度接点を持つ機会を得るしかないのだが、その為には誰かを殺す依頼をしないとならない。


正直、この世には死んでも良いと思うような人間は星の数ほどいると思う。でも、誰かを自分の利益のためだけに殺した時の辛さをもう一度味わうのも避けたい。


『うーん、どうしようかな。でも、私をあんなに辛い目に合わせた人間を許せない。』

諦めきれない私は、死んでも良いと思っている人間を何人かピックアップし、その人たちの中で他人の悪口を言い続けている一人の人間に目星をつけた。


『この人なら必ず依頼するはず。それにこの人は私に惚れているから、最悪、少し褒めてあげたりキスの一つでもしてあげれば、やらないはずはない。』

私は早速、スマホを操作して連絡を取った。


「とりあえず、この連絡先に殺したい人の名前と写真を送れば良いの?」

タケシは思った以上に殺人依頼に前のめりだった。

「そうそう。それで数日後には本当にその人が殺されるから。」

「まじかよ。ってか、本当にこれ500円で済むのかよ?殺した後に、数百万円とか数千万円とか請求されないよな?」

「それは大丈夫。私の知り合いが頼んだらしいんだけど、本当に500円しか請求されなかったって言ってたし。」


「500円で人殺すって、どんな神経してんだろうな。世の中、頭イかれたやつって本当にいるんだな。」

「本当だよね。で、誰を殺してくれって依頼したの?」

「それは秘密だわ。」

「そっか。じゃあ、向こうから連絡がきて直接会うことが決まったら、必ず私にも連絡してね。」

「分かったよ。でも、なんでこんな危ない連中と会いたいって思うんだよ。」

「タケシに何かあったらって思うと嫌だから、念のためにってだけだよ。」

「なんだよお前、俺のこと好きなのかよ。」

タケシは少し照れている様子だった。

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