第6話
「四谷、今日の夜ってなにか予定あるか?」
「特になにもないですけど、飲みに連れて行ってくれるんですか?」
「あぁ、今やってる金にならないビジネスを始めた理由を教えてやるよ。」
「ありがとうございます。じゃあ、今日は残業なし目指して頑張ります!」
「それで社長、単刀直入にお伺いしますが、なんで1円の得にもならないことを始めたんですか?」
「人間誰もが心の奥底に抱いている醜さってやつを引きずり出して、自分の目先の利益の為に後先考えず行動するバカどもに自分の愚かさを死ぬまで後悔させ続けてやろうと思ったからだな。」
「人間に恨みでもあるんですか?」
社長は目を閉じて上を向いた。これまでの過去を思い出しているようだった。少し時間が経ってから口を開いた。
「恨みはあるね。これまで幾度となく人には騙され裏切られてきたし、訳も分からず脅されもしてきた。そいつらは皆んな、『自分さえ良ければ他人はどうなっても良い』という考え方をする連中ばかりだったし、この軽率な行動を取ることで傷つく人がいるなんていう考えすら巡らせない連中ばかりだった。人の成功を妬み、他人を蹴落とすことで自分の地位をあげようと画策したり、本当に人間ってやつの本質を嫌というほどに見せつけられた。」
社長はビールを手に取ると、嫌な記憶を消し去ろうとしているのかグイッと飲み干した。
「社長、どんな人生送ってきたんですか?」
「まぁ40年以上も生きてれば、それなりの人生経験があるもんだよ。それに自分で事業を立ち上げてきた過程でも、多くの人たちから色々とされてきたし。最近ではSNSが当たり前になって、自分の身元が分からないことを良いことに誹謗中傷を繰り返してストレス発散してるクズ共が多いよな。で、そういったクズ達を一人でも地球上から葬り去ることが一番の社会貢献になるんだと思って、今のビジネスを始めたってわけ。まぁ、1円も生んでないからビジネスなんて言えないけどな。」
社長は笑っていたが、目の奥は全く笑っていなかった。
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