第5話

「おい四谷、そういえばあいつはどうなった?」

「あいつって?」

「お前が最近受けた案件の依頼主だった女性だよ。」

「あー、あいつなら最近は仕事も行かずに家に引きこもってるみたいですよ。」

「そうか。まだ生きているのか。しっかりと最後まで追い込みかけて自分が犯した罪を認識させろよ。」

「分かってます。人が理不尽に死ぬっていうのがどういうことかを骨の髄まで教え込みますよ。」

「頼んだぞ。」

「でも、なんでこんな金にもならないこと始めたんですか?」

「まぁ、きっかけなんてもんは本当に些細なことだよ。今度、時間あるときにでも教えてやるさ。」

「よろしくお願いします。」


私の元には、あの手紙が届いてからも毎週必ず実行犯と遺族の近況などが配達され続けた。その都度、自分がしでかした過ちを否応無く思い出させられる。しかし、自分が犯した罪を申告するほどの勇気もない私は、ただただ家に籠り現実と自分の罪から逃れ続けた。

『あの時、たった500円で自分にとって邪魔な人間がこの世から消えてくれる。しかも、自分の手を汚すこともない。そもそも、常識的に考えて、たった500円で人を本当に殺すなんて誰が予想するだろうか。人の醜い憎悪や嫉妬などを掘り起こし、その醜悪さを陽のもとに晒す。こんな恐ろしいスキームを考え出したのは一体、誰なんだ?』

私はこの状況に追い込んだ人間を逆恨みするようになっていた。

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