第4話
犯人逮捕の報道から一週間、二週間の間は生きた心地がしなかった。スマホが鳴る度に警察からの連絡が来たんじゃないか。家のインターホンが鳴る度に警察が逮捕に来たんじゃないかとビクビクする生活が続いた。そのせいで生活は荒み、肌荒れも酷くなり誰の目から見てもボロボロだった。
会社からは接客業として私を表舞台に立たせる訳にはいかないと言われ、裏方仕事に回されることになった。
「本当に大丈夫?少し休んだ方が良いんじゃない?なんか悩み事があるなら話聞くよ。」
アユミは私のここ数週間でのあまりの変わりようを本気で心配してくれていた。
「ありがと、アユミ。実はね。」
私は例のお客を殺してもらうように依頼していたことをアユミに話した。
「まぁ、もう数週間経っているのに音沙汰がないんだったら大丈夫じゃない?それに殺人依頼をしたとしても、あんたと実行犯には何も繋がりがない訳だし大丈夫でしょ。心配しすぎだよ。」
「そうかな?」
「そうだよ、心配しすぎだって。今日あたり美味しい物でも食べに行こうよ。ね!美味しいもの食べて元気出そう!」
「分かった。」
ご飯行った後、自宅に戻りポストを開けると一通の封筒が入っていた。差出人は不明だったが、宛名の筆跡や封筒の厚みから嫌な気がした。
恐る恐る封筒を開封すると、そこには殺人犯として起訴されている犯人との接見記録や遺族の現状を隠し撮りした様子の写真、そして手紙が一通入っていた。
その手紙には、遺族が犯人に対して抱いている恨み、憎しみにまみれた言葉の数々が散りばめられていた。
急に吐き気をもよおした私はトイレに駆け込んだ。便器に顔を突っ込み、吐き続けながら私はたった500円で少し気にくわない人を殺してもらえると思い、気軽な気持ちで殺人を依頼してしまった数週間前の自分を憎んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます