第28話 アヤカの日記④

   アヤカの日記/4


「能力を引き出す……? えっと、つまり、それが『魔法』ということになるんですか……?」

「なんか嘘っぽいよねえ。私も嘘っぽいと思うよ」


 うんうん、と大家さんは力強く何度も頷いた。


「最初は『能力』って呼んでたんだけど、なんだか味気ないじゃない。だからこそあたしはね、魔法って呼ぶことにしたんだ。ま、たいして差はないんだけどさ」


 悪戯をしかけている子供のような表情を、大家さんは顔に浮かべた。


「そう、なんですか……?」

 大家さんの言葉を上手く飲み込むことが出来ない。顔がひきつっていないか、心配になった。それでも私は口を動かした。

「確かに、えっと……カワイイ感じはすると思いますけど……」


 そうだよね、と嬉しそうに笑う大家さん。まったくもって解せなかった。


「それで、あの」

 申し訳ないと思いながらも私は先を促した。

「それって、具体的にはどういう……えっと、魔法なんでしょうか」


 魔法、魔法、と大家さんの連呼を聴いたせいか、魔法、と口にすることが少々恥ずかしくなってきていた。

 なんだかメルヘンチックな世界だが、私も首まで漬かっていた表現方法だったではないか。めげてはならない。求めていた事実がここにあるのだから。


「うーん……」

 大家さんは腕を組んだ。

「なんとなくピン、とこない?」


「きません」

「まあ、そっかあ」


 じゃあ例えばね、と大家さんは続けた。


「こんな話はどうだろう。本当にあった、わたしの魔法に関する話」


 大家さんはどこか遠い場所を眺めるようにして、私へと語り始めた。

 それはいくつかの物語。


 まるでおとぎ話のような、とても不思議な、猫と人との物語——。

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