第167話

教科書を忘れた。

前の席の亀谷君に見せてもらうわけにもいかないから隣の席の良子さんに見せてもらう。


「良子さん、教科書見せてもらってもいいですか?

忘れちゃって……。」

「いいですよ。」

そう言ってもらえたので机を近づける。

机がくっつく距離って思ったよりも地下七って思いながらもこれ以上授業に遅れるわけにはいかないから集中して授業に臨む。


俺もこの授業は頑張ったけど……隣の良子さんはもっとすごかった。

俺以上に集中して、しかもノートもめっちゃ綺麗だった。

端と端がそろってて、この間見せてもらったときも思ったけど俺には一生取れないくらいに綺麗にノートを取っている。

このノートを見るとノートの余白って大事なんだなって改めて気づかされる。

そのくらい綺麗なノート。


次の時間は俺が教科書を置きっぱなしにしている教科だった。

つまり勉強してない教科なんだけど……。

「あ、やばい……。」

亀谷君と話して、自分の席に帰ってくると隣からそんな声が聞こえる。

「大通君、ごめんなさい。

教科書を見せてもらってもいいですか?」

「いいですよ!

なんか今日は席が近い一日ですね」


お互い同じミスをしてしまったのがどこかおかしくてそんなことを言ってしまう。

そして少し話していたら休み時間が終わる。

授業が始まり、良子さんのノートを見ると子の教科も変わらず綺麗だった。


真似をして頑張ってノートを取ってみるけどうまくいかない。

何事も一朝一夕にはいかないなって学んだ。

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