第160話

良子さんにノートを見せた。

人にノートを見せたことなんてない俺からすると不安で仕方がない。


眠たい目で書いてるミミズみたいなのが這いずった後みたいな文字はなかったはず……。

元々の字が下手だからそんな文字がなくても読めるかどうか分からないのに、そんなものがあったら絶望しかない。

そうしたら俺が読めないのはいい。

何よりもまずいのは折角格好つけられるチャンスが巡ってきたのにそのまま誰にも読めませんが辛くて仕方がない。


貸したノートが読めたかどうかは気になるけれども俺は俺でこの時間は亀谷君と話すことにする。

ずっと貸してるノートの前に居ても気持ち悪いだけだろうから。


次の二限目のチャイムが鳴った。

この担当の先生は時間にルーズだからまだ来てない。

「ノートありがとうございました」

「え、もうですか?」

「はい。ほんとに一部だったのですぐ写せました」

「字、ちゃんと読めました?」

「普通に読めました。大丈夫です」

笑顔でそう言われるとどんなことでも信じてしまいそうってくらいの穢れのない笑顔。


「ならよかったです」

言い切らないあたりで先生が来て授業が始まってしまう。

もう少し話していたかったけど……まぁ仕方がない。


そしてさっきまで良子さんと話していただけで体力回復したと思ったけど……またも眠くなってきてしまった。

朝のSHRのときに寝て出来た余裕はさっきの授業で使い果たしてしまったらしい……。

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