第150話

 いつも通り学校の始まる時間の3分前に着席して、一限目の準備を整える。

 一限目から憂鬱な数学だけれども…この間勉強したこともあるし、夜中も頑張ったからついていけるかもしれないって幻想を抱いていた。


「この時、Xはどうなりますか?」

 先生が聞く。

 正直言ってXがどうしたって話なんだけど……頑張って考える。

 XとXは足せる。

 他は考えないから……。


 他の人よりもゆっくりだけど自分で考えて答えを出せた!

 ここ最近の努力での成長を感じて嬉しくなってくる。

 でもこれが授業、序盤の問題を解くための大前提ってことを思い知らされて絶望する。

 因数分解なんて絶対に学校生活以外で使わないじゃんって思わなくもないし、頑張る意味がわからないから頑張れないですって先生に言いに行ったらテストを免除してくれたりしないかな、なんてめっちゃ甘い考えを思いつく。

 多分、今回の場合に限っては実行する時に信用って言う重い重い代償を払わなきゃ行けない。

 そしてこのくだらない考えにはその代償を払う価値はない。

 自分でも下らない、あり得ないものだって分かってるから。


「はぁ。大変だ……」

 ため息をつきながらでも何とか手を動かして、頭を働かせて数学を頑張る。

 それが何よりも建設的だから。


「大丈夫?」

 お隣の良子さんが助け舟を出してくれる。

 クラス全体に教えてる先生より、俺個人に教えてくれる良子さんの方が丁寧で分かりやすい。

 当然とはいえ、中学の頃は知らなかったこと、そもそも勉強をしてなかったから。

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