第141話

 何をしてでもというほどでもないけれども、ちゃんと欠点を避けようっていうまともな感覚を持っている俺はとりあえず人を頼る。


「亀谷君、数学。教えてくれませんか?」

「んー……。数学はちょっと厳しいかも……。他教科なら何とか教えられる気がするんだけど数学だけは教えてもらう側になっちゃう……。」

「あー。じゃあもし俺が理解出来たら教えます!」

「あー。お願いします」

 まるで小さな子供にするように優しく微笑まれてしまった。

 悔しいけれども今の俺は俺の言葉が現実的なほど頭がよくない、悲しいことに。


 そんな話をしているとチャイムが鳴って次の時間の担当の先生が入ってくる。

 挨拶を手早く済ませ、授業が始まった。

「大通君。さっき話しているのが聞こえたんですけど……数学私が教えますか?私、多分今の単元なら余裕です!」

「えっ!ほんとですか。じゃあお願いします!」


「おい。そこの後ろ二人、授業に集中しろ!」

 授業中にそんな話をしていた俺ら二人は先生に見つかってクラス全員に注目されるっていう苦痛を味わう羽目になった。

 しかもクラスではあまり仲良さそうじゃない二人だったから好奇の視線が痛いほど刺さってくる。

「ついてなかったですね」

「ほんとですね」

 美少女たる良子さんからしてみればこんな視線日常の一環ということなのか何も変わっていないように話を続ける。

「今日って暇ですか?」

「部活さえ終われば……。」

「じゃあ部活終わったら教えてください。」

 小さくそんなことを言ってくれる。

「じゃあ可能な限り早めに帰りますね。」

「お願いします」


 そんな楽しそうな勉強会の予定が決まった今日の授業。

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