第135話

 何時までも汗だくな状態でいるのは嫌なのだけれども朝、あんなに急いでいたからそんな準備なんて特になく途方に暮れる。

 どうしようもなくて途方に暮れていると隣の席の良子さんが声をかけてくれる。

「大通君。汗拭きシート使いますか?」

「あー……ありがとうござます。」

 そう言って鞄の側面にある小さなポケットから出てきた汗拭きシートを一枚受け取る。

 まだ少し冷えるくらいのこの時期になんでこんなものを持っているのか疑問はあるけれどもありがたい。

「これ、今日の部活動に使う予定で……。」

 始業までに拭き終えてしまおうと思って焦りながら拭いていると良子さんが俺の疑問を解決してくれた。

「部活で使うもの貰っちゃってよかったんですか?」

「全然大丈夫!使うって言っても外見だけだから。」

「そういえば部活動にはどこに入ったんですか?」

「私はね!写真部に入ったんだ!」

 その言葉を聞いて、この間写真が好きだって言っていたことを思いだした。

「じゃあ前言っていた通りになったんですね」

 

 こんな会話をしてようやく良子さんと話すのがそれなりに久しぶりだということに気が付いた。

 家が隣で学校の席も隣なのにまともにしゃべってないことに気づいた。

 避けているわけではないけれども……それでも話そうと思わないとすぐに疎遠なってしまうなって気づいた。

 せっかく仲良くなれたお隣さんだから仲良く居たい。 

 そう思うのは自然なことだと思いたい。


 そうして良子さんと話して楽しんでいるうちに授業が始まりそうなぎりぎりな時間になってしまった。

 

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