第119話

こんなに楽しいのは久しぶりだった。

おやつを食べるために目についたクレープの店。


その店は行列になっていた。そこの列の中には男の人、二人組とかもいたから並びやすかった。

大田君は携帯をいじって何かをしている。俺は何もすることもなくボーっと今日は楽しかったななんてことを考えていた。


だんだんと列が短くなっていく。

それとともに甘い匂いがだんだんと強くなってくる。お腹が減ってくる。


店の前にメニューが黒板の小さいのに張り出されていた。目を引いたのは赤いチョークで書かれている『苺クレープ』。

他のメニューもカラフルに描かれていたけれど、それが何よりも目についた。


「大田君、メニュー決めました?」

「ぁ…?じゃあバナナにするわ」

大田君が選んだのは黄色いチョークで書かれていたバナナクレープ。それもおいしそうだった。

「あー。お腹、減りましたね」

「まぁ、減った。」


それから少しして、列がなくなる。

「苺クレープとバナナクレープでお願いします!」

「お二つ一緒の会計でいいですか?」

「はい」

俺が答える暇をくれず大田君が答えてしまう。

「合計で983円になります。」


お会計は大田君がすべてやってくれた。

「大田君、お金返します。」

「いらない。このクレープは今日のお礼ってことで。」

そんな話をクレープが出来上がるまでの時間でする。

大田君ってやっぱり『漢』って書いて『おとこ』って読ませるタイプの人間だって思った。


そのクレープの味は忘れられないくらいに美味しかった。

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