第118話

坊主にスカジャンのイカツイ人が「彼女のために」と必死になって服を選んでいる。

太田くんのイメージと違いすぎて笑いそうになっちゃうけど…本人はいたって大真面目だから笑うわけにはいかない。

マネキンを参考に服を持って試着室に入って、珍妙な顔で出てくる。そんなことを繰り返して、4回目。早くも気に入ったものが見つかったらしい。


それはワンポイントのポロシャツにジーンズ。何の面白味もないものだけれど…これまでで一番似合っているもの。

……結局、俺は必要だったのかと疑問に思うけれど友人が必死になって服を選んでいるのだから無粋なことは何も言わない。


「太田くん、買いたいもの買い終わりました?」

「ああ、待たせて悪かった。大通はなんか見たいのないんか?」

「ないです」

「……こういうとこ来ないから何があるのかわかんねぇ…」

「ですね。なんか適当に歩いてます?」

「そうだな。」


いかつい男と2人で家族連れがいっぱいいるショッピングモールを回る。なかなか周りからの視線が痛くて疲れた。それでも友人とこういうショッピングモールを回るのは楽しかった。


ゲーセンで周りの音にかき消されないように大きな声で馬鹿みたいな話をしてみたり、絶対に必要のないものを見て回ったりした。

意外とそれが楽しい。


「よし、そろそろ帰るか…」

「ですね。…はしゃぎすぎましたね」

「だな」

そんな感じで楽しみすぎて昼ごはんも食べ損ね、いつのまにか時間は3:00。

帰るという話になってもお腹は空く。


だから最後に甘いものだけ食べてから帰ることになった。

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