第107話

朝の時間からずっと話す人がいる贅沢を実感している。

 もともとはずっとこんな生活だったなんて今では考えられない。今は話す人がいる楽しさ、一人じゃない楽しさを知ってしまった。


亀谷君がノートを写している間は話す人がいないから一人でぼっーっとするほかないけど昨日と違って苦痛じゃない。友達の存在の偉大さを実感してしまう。


 「おわったー!」

「えっ。はや」

まだ十分も経っていない。それなのに昨日一日分のノート記入を終わらせてしまった。

後ろの席からちらりと見えたノートは何の文字化も分からないものが綴ってあった。

「大通君、昨日の分まで話しましょう。話したいことがいっぱいあります。」

冒頭から心の底から楽しそうに話すからこっちもさらに楽しくなってくる。

 「昨日は体調が悪すぎたので学校これなかったんですが、どこか部活動見学に行きましたか?」

「昨日は何処にも行ってません。亀谷君と一緒に行きたくて。」恥ずかしいけど感情は思うだけでは伝わらない。学びを活かしていく。

「ありがとうございます。今日って大通君は暇ですか?」

「もちろん。部活動見学行く?」

「行きたいです!どこ行きたいとかってありますか?」

そんな一日の始まりに一日の最後の話をする。今から放課後が楽しみでしょうがない。



 「じゃあ授業を始めるぞー」

そんな数学の先生の宣言を無視して、どの部活に行けば楽しいかを入学の時にもらった資料の中あった部活の名前が一覧になっているプリントを見ながら考える。


……放課後が楽しみ過ぎなんだけど。

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