第105話

「今日こそ亀谷君が来てくれますように…。」

そう願って靴を履いて学校に行く準備を終わらせる。

『今日も亀谷君が来なかったら…』そんな怖さもあるけどそんなことを思っていたらいつまでも学校にいけない。そう思って重いドアを開ける。

そして今日も今日とて一人での登校。大田君も良子さんにも会えなかった。良子さんは俺が家を出る何分も前に出てるみたいでその時間から学校に行く準備を始める俺は絶対に会えない。

大田君は逆に俺の二本くらい遅い遅刻のギリギリの時間で電車に乗ってるらしく会えない。


一人での登校はとても暇だから普段なら絶対にしない読書というものに手を付けてみようかなって思って家に唯一あった本を持って来てみた。

…なんだ、これ。ほんとに眠くなるんだけど。電車の心地いい揺れとまだ朝っていう事実に今は椅子に座れてる。さっきの駅でこの席に座ってたスーツのおじさんが降りていったからありがたく座らせてもらった。電車の心地のいい揺れを感じながら、椅子に座りながら、朝の眠い時間に、活字を読むのがここまで辛いものだなんて知らなかった。

ここで寝てしまうと確実に乗り過ごしちゃうから眠れない。


苦痛に耐えながら次の駅で…ってところまできた。

前に立っていた人に椅子を譲って立つ。そうして辛くて仕方のない満員電車の中央に行く。何処を見ても人しかいない。息が詰まる。

朝から眠くてふらふらしてるけど学校についたら寝てしまおう。そういう心構えで学校までの今の俺にとって長い長い距離を歩いていく。

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