第93話
50点…。音痴なのは何となく気づいていた。それでもこれは酷すぎる。
「…ドンマイ」大田君が優しく声をかけてくれて涙が出てくる。
いや今日、初めてカラオケ来たから知らないだけでカラオケではこのくらいの点数が普通のなのかもしれない。そこまでではなくても平均が60点くらいならもう満足。
「…なんでそんなに高い点数が…。」思わず絶句してしまう。
俺の次に歌ったのは良子さん。そして良子さんの点数は87点。…知ってた。平均が60点な訳ないよね。
全員一回は歌い終わった。そしてワースト点数がでた。俺の50点。他の人は大体80~90点の間。なんだかんだ言って最高点は大田君の98点。普通に美味かった。
「…決まらないのでお先にどうぞ。」十八番を歌ったはずなのに一番低い点数をたたき出してしまったからハードルが高くなって、この状況で歌える曲が思いつかない。とりあえず何かいい曲はないものかと思い出すけれど、何もない。
「良子さん。歌、上手いですね。」取手さんは物凄いうまかった。だから下手なのは俺だけで救いがない。…このメンツではもうカラオケなんてこない。心に決めた。このメンツでカラオケに来ると本当に俺の心が持たないから。
というか何を歌おう。流石に何も歌わないのは申し訳ないというか…。
何か思いつかないかな…。歌える曲、曲。あ~一つ思いついたけど精々口ずさむ程度にしか知らない。いや、いける。いけると信じよう。
「また…。」絶望しかない。十八番で50点なのにそれ以外で結果が出るわけない。
それなのにわざわざ結果を直視してしまった。
「あ~楽しかったですね~」「楽しかったです」良子さんが普段以上に楽しそうで良かった。でも俺の結果は平均43点。本当に不思議な結果。
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