第87話

良子さんと目くばせをして心の準備を整える。…緊張のせいで手汗が凄いことになってる。プレゼントに着くといけないからこまめに服で拭いてるんだけど本当に瞬き一回の間で手汗が出てきちゃって凄いことになっちゃってる。

「善子さん…。えっと、その、あー誕生、誕生日プレゼントです」コミュ障が出てちゃってる。人にプレゼント渡すのもうトラウマ。怖いからもうしばらくは人にプレゼントなんて買わない。

「え!わざわざ買ってきてくれたの?」「はい。全然安いものになっちゃったんですけど…」「全然大丈夫だよ。本当にありがとね」よく分からないプレゼント用の袋に入れてきてもらったから包装の心配はなくとも中身が包装に負けてる気がしてくる。「…あ、お母さん。私からもプレゼントあるの…」「えーくれるの?」声が出なかったのか大きくうなずいている。「ありがと。娘と娘の友達に誕生日祝ってもらえるなんて幸せだな」…そうえば俺なんで今年知り合った友達のお母さんの誕生日を祝ってんだろ…。冷静に考えたら何やってんのかわかんないじゃん。…まぁいいか、気にしたってしょうがないや。

「お~大きい袋。」プレゼントを渡すって言ってからプレゼントをカバンに忘れてきたことに気づいて鞄に取りにいってたら渡すのが遅くなっちゃってた。ただそこまで引っ張った甲斐があるくらいに立派なプレゼント。デパートで見た置物の他に最初に見たお菓子、帰り道にやっていた沖縄の物産展で見つけたちんすこう。つまりお菓子がたらふく入ってる。

たかがお菓子じゃない。あの袋の中に入ってるお菓子の総額は5000円以上。やばい金額の袋詰め。

「あれ、ちょっと待ってて。頑張って涙止めるから」良子さんのプレゼントをもらった時にぽろぽろと自然な感じで涙があふれてきてしまった。それだけ感動したってことなんだろうな~。そんな感動的な場面にほとんど部外者が一人。

ここから動くと、というか音を立てると空気を壊しちゃいそうで動けないけどここにいるのも胃的にきつい。

何でこんなことしてんのかね。

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