第73話

良子さんと改めて自己紹介を終わらせたところで今度は近くの人と適当にペアになって自己紹介をしろとの指示。本当に義務教育の時までとは違って先生が細かい指示をするんじゃなくて生徒の主体性を大事にしてくれてる。


俺はとりあえず前の人と自己紹介をしておく。「お願いします」「お願いします。どっちから自己紹介します?」「じゃあ僕から。亀谷陽です。好きなものはお肉と筋肉です」…さてここで亀谷君の容姿を簡潔に説明するとどちらかと言えば瘦せているくらいの体に中性的な顔。…人を見た目で判断するのはダメだって良子さんの時に学んだけど、けどいくら何でもこれはギャップが過ぎるでしょ。「筋肉、鍛えてるの?」「鍛えてるよ。今は100キロのダンベルでやってます」「凄いですね」

こっちに来てから世の中いろんな人がいると改めて学んだ。


そんな学びもほどほどに俺の自己紹介を考えないと。…いつものでいいか。決して考えるのがめんどくさくなっての妥協案じゃない。

「大通一真です。よろしくお願いします。こっちには最近来たばかりなので分からないことばかりですがよろしくお願いします。」良子さんに挨拶したときと同じで嚙まなかった。結構緊張したけどしょうがないでしょ。いくらやろうともこればかりはなれる気がしない。「へ~北海道に来た感想とかって何かありますか?」「やっぱり寒いのが辛いですね。」「本州の方ってどれぐらいあったかいんですか?」「かなり」「そうなんですか。僕は北海道から出たことがないので全然想像つかないですけど」

「修学旅行とかも北海道内で済ませるんですか?」「いや本当は飛行機を使って大阪に行くんだけど、そのとき風邪ひいちゃって寝込んでたんですよ。」「あ~」こういう時になんて言えばいいのかわかる人がいれば教えてほしい。下手なこと言えないし

、ドンマイもなんか違うし。「終了~」悩んでたら時間がきた。亀谷君いい人なんだけど…修学旅行の話に返すコミュニケーション能力を持ち合わせてないから正直感謝。「話すの楽しかったです。また話しましょう。」「席も近いですしね。」


これは亀谷君友達と言っても過言ではないのでは?…家も近く無くて誰かの知り合いでもない。自分のコミュニケーション能力だけで出来た初めての友達の気がする。ヤバい。気づいちゃったら本当にうれしくなってきた。早く学校終わらないかな。早く飛び跳ねて喜びたいのに。ちなみにここでやらないのはせっかくできた友達をこんなことで失いたくないから。

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