第72話

高校の自己紹介もしてないのにクラスで一目を置かれている。決していい意味じゃなくて、悪目立ち。


腰は比較的早く治った。ただゆっくりとほぐしていったら楽になってきてはいたものの念の為に一時間ぐらい保健室にいて教室に来た。俺が帰ってきた時間は休み時間だったらしく生徒たちが思い思いの場所で話していた。ただ一番多いのは自席で周りの人と話していた人。

そして何で過去形なのかというと、俺が来たら距離感を計りかねるように気まずい空気が流れたから。「大通君、大丈夫だった?」「はい。ほぐしたら治りました。」「良かった。大通君席どこです?」俺のことを心配してくれるのは良子さんだけだよ。取手さんは俺が来ても気にせず話してるし、大田君に至っては脛を蹴ったことをまだ怒ってるのか脛を凝視してるし。ああ、怖い。救いは席が俺が一番右の列の一番後ろ、大田君が隣の列の一番前であること。…これ結局大田君の隣通らなきゃダメじゃね?「太田君、俺の脛を凝視するのやめませんか?」「一発蹴らせてくれたらいいぜ」大田君と喧嘩すると登校とか気まずいし何よりこれからも仲良くしていきたいから黙って脛を差し出す。こうして進んで脛を出せば遠慮して弱めに蹴ってくれる説。

「!!」声が飛んでいくほど痛かった。これはアカン。次やられたら折れるは。「これでチャラでいいですよね」「ああ。俺もスッキリしたから大丈夫。」…むしろこれでダメだったら俺の骨が折れた。喧嘩でこんな所ぶつけないから鍛えられてないんだよ。恐ろしい。


「じゃあそろそろ席に就け~」担任が入ってきてそれなりの時間立ったまま話をしてたのを自覚した。


急いで席に行くと当然ながら助けてくれた優しい男子生徒の後ろの席だった。「さっきありがとう。本当に助かりました」「全然大丈夫ですよ。もう腰よくなりました?」「なりましたよ。」腰を回すとゴリっていう嫌な音が響いたこと以外は問題がない。「今なんかすごい音なりませんでした?」「…気のせいです。」痛くは…ない。なら大丈夫。「じゃあとりあえず自分の席の隣のやつと自己紹介をし合え」前の人としか話してなかったから意識してなかった。どんな人だろ。「大通君、よろしくお願いします」そこには良子さんがいた。…なんで知り合いが隣で気づかなかった。俺の頭が遂に壊れたか…。「学校でもよろしくお願いします」「家も隣で学校も隣とか凄いね。」「本当に。」感謝しかないっていうのは心の中のみの言葉にしておく。

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