第71話

苦しみもだえる大田君を見て上手く痛いところに入っていることを確認して俺自身は直立不動を貫く。「大通、てめぇ。覚悟いいんだろうな。」「今入学式の途中ですよ?」「じゃあ入学式が終わったら覚悟しろよ」モラルを持った不良が太田君。



「それでは第100回入学式を終了します」残りは特に立たされることもなくぼっーとしてたら終わっていた。その代わり椅子に座ってる状態でも分かるほどに腰が痛い。これは立つときに腰を壊すな。

一組から順に帰っているのを見て改めて怖くなって来た。ゴギっとか言ったらどうしよう。「七組、起立。」ゆっくりと、慎重に立ち上がると予想と違ってゴギっとは言わなかった。メギって言っただけで。…はぁ、腰が動かない。こんなんだけど気合入れて体育館を歩いて退場しないといけない。辛い。



とにかく腰を曲げて恥ずかしかったけど今日初めてあった前の人に肩を貸してもらいながらゆっくりと歩いて行く。幸い入り口で詰まっているらしく流れは遅い。それのお陰でこうして何とか列についていけているところがある。


頑張って体育館から抜け出すと腰がもう抜けた。「大丈夫?!」もたれかかっていた前の人がわざわざ心配してくれる。「大丈夫です。」大丈夫と言ったもののここは道の真ん中で人通りの邪魔になるから這って道の端っこによける。そこで腰の回復を待とう。

ちなみに後ろにいた大田君は笑顔でいるだけで心配すらしてくれなかった。悲しいじゃん。「大丈夫ですか~?」ずっと後ろの方にいたはずの取手さんに声をかけられた。もうこんなところまで来てしまったのか…。「大丈夫です。腰以外は」「なら~大丈夫~ですね~」何が大丈夫か分らないけど取手さんは行ってしまった。「あ、そうだ。先生を呼んでくるね」本気で心配してくれたのは俺の一つ前で退場してた男子生徒だけ。俺は悲しいよ!…下手な茶番をやっていたらさっきの人が担架を先生と一緒に持ってきてくれた。「腰が痛いなら無理して動かない方がいいから、今から保健室行くよー。」教室以外に始めて入るのが保健室になった。縁起が悪い。

辛いけど頑張って担架に載せられて周りの興味津々な視線を一心に集めながら担架で運ばれたときは心臓も壊れるかと思ったのは一時間経った今でも悲しい思い出です。

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