第65話
「説教の時に正座させるのだけは何とかなんないものかね…」いつもの言葉遣いすら何処かに行ってしまった大田君がつぶやいている。「畳ならもう少しいたくないんだろうけど、ここフローリングしかないからね」足の表側にフローリングの後がつくまで取手さんに説教をされて、説教の感想を太田君と二人で話し合う。
「マジで、信良を怒らせると怖いってことが分かった。」「本当にね。俺なんか今も足が痺れて動かないもん」「はー…恋人との距離感がつかめねー。…大通これから暇か?」「暇ですけど、何かありました?」「いや、これから本屋に行って恋人との付き合い方とかが載ってる本を探してこようと思っただけだ。」恋愛の本…縁がなさ過ぎてどんなのだか分からない。「いわれても分からないので確実に戦力外ですがそれでよければ一緒に行きましょう」「よし。準備済んだら呼んでくれ。」何故か今日の大田君は優しい。「早くしろよ!」気のせいかもしれないけど。
「準備できましたよ」俺は大田君の通ってきた道とは違う道、ちゃんと玄関から出てインターホンを通してコミュニケーションをとる。
「本屋への道のりって分かんの?」本屋…そういえば用事がなくて分からないままになってるや。「分からないです。ここから近いですか?」「まあ近い。ただ駅と反対方向にある立地の悪さだから学校の帰りに寄り道とかは出来ないかんじ。」「へーじゃあ利用する機会があんまりなさそうですね」「いや行くのめんどいけどノートもシャーペンもとにかく全部安いから金がない時に利用することになると思うぜ。」
五分くらい歩いて着いたのはオブラートに包むと趣のあるお店だった。
「おーい。相変わらずぼろいな。」「あぁ?わざわざ喧嘩売りに来たのか?」出てきた店員さんは太田君と同じくらいガラの悪い人だった。スカジャンに腰パン。一瞬どういうファッションなのか分からなかったけど、確か一昔前に流行ったやつじゃなかったかな。「なんだ?こんな辺鄙なところに珍しく客だぞ?歓迎しろよ」「お前は客じゃねぇ」「えっと太田君、この人は?」「あ?太田に友達?あーなるほど明日は槍が降ってくるんだな。この家耐えられるかな。」「こっちの頭の故障してる奴は
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