第60話
起きたら地面に血だまりを作っていたなんてことはなく五体満足で自室で目覚めた。昨日のあの状況から生きて帰れた。今は純粋にそれが嬉しい。昨晩は本物の恐怖を味わった。
命があることとそろそろ春休みが終わってしまうことを意識して食べた朝食は何故か激辛カレーの味がした。食べたものは醬油をかけた目玉焼きだから料理の所為じゃない。心当たりは昨日の昼ご飯。あれは何の例えでもなく味覚狩り。まあ美味しかったからいいんだけど。
「さて、ご飯も食べたし何しようかな。」ボーっとしていたら独り言が漏れてしまった。窓は開けてなかったから引っ越してきたときみたいな事にはならないはず。
せっかくなら今まで観光できてないから観光に行こうかなとも思ったけど観光地への行き方すら分からない。わかるのは高校への行き方とスーパーまでの行き方のみ。取手さんの家には10分ぐらい迷えば着ける気がする。
…だれか誘うか。とりあえず良子さんに携帯アプリでメッセージで観光地への行き方を教えてください、という文章を送った。流石に一緒に行こうとは言えなかった。元ボッチなめんなって話だよ。
さて良子さんの返事を聞くまで暇になってしまった。ごろごろして過ごそうかなとか考え始めたタイミングでインターホンがなった。「はーい、今出ます。」適当に返事をしてから玄関を開けると出かける準備が整っている良子さんと取手さん、大田君がいた。「大通、今から観光に行くぞ。」「えっと…はい。」こういう時は流されるに限る。下手に流れに逆らってもどうにもなんないから。
「ただまだ何も準備をしてないので二、三分ぐらい待っててください。すぐに準備を終わらせるので」
洗濯してから適当にその辺に出しておいた、けして片すのがめんどくさくなった訳じゃないパーカーとこっちに来てから一度も来てなくて未だ段ボールから出してなかったジーンズをはいたら準備は終わり。
「お待たせしました。」急いで出てきたせいで扉に足の指ぶつけた。マジで痛い。「なにか~凄い~音しました~けど~大丈夫~ですか~?」顔を上げると笑顔の取手さんがいた。「大丈夫です。それより今日はどこに行くんですか?」「今日はね、札幌駅に行こ。楽しいよ」良子さんがすごい勢いで教えてくれた。札幌…どこかで聞いたことがある気がする。……県庁所在地か。どこで聞いたのかはっきり思い出したからなんかスッキリした。
「じゃあ大通君の準備も終わってし、駅に行こ」
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