第48話 かまくら宿泊体験

なぜかかまくらから出てきた大田君に驚いた。逆にこれで驚かない人は凄いと思う。「ようやく来たか。カイロ持って来たか。今俺は凍えそうだから持ってきたカイロをくれ。後で必ず恩は返すから」俺の返事も待たずに一息にそこまで言い切った。ただ唇が紫色になってて限界そうだった。こんな所でホッカイロを渋ってもしょうがないので素直にホッカイロを大田君に渡す。言い方は…後でいいや。てかもう慣れた。こっちに来てから人の適応力に驚かせれられる。

ホッカイロの袋を破って使える状態にしてから大田君に投げ渡す。凍えてるとは思えないほど機敏な動きでホッカイロをキャッチした大田君は残像が見えるほど早くホッカイロを振っていた。もう実は元気なんじゃとか思いたくなる動きだった。

「なんでこんな寒いところにいたんですか?」もし本当にやばなら質問とかは後にしようかとか思ってたけど大田君が元気そうなので質問をする。

「そんなん決まってんだろ。迷ったんだよ。」堂々たる宣言。もう誇っているようにすら聞こえる。「そもそも、なんで取手さんの家から出てきちゃったんですか?」

一応心配しているニュアンスを持たせて伝える。友達同士のカップルの破局を進んで祈るほどまだ恋人に困ってないから。

「いや、あのな」歯切れが悪い、あの大田君が。今までだと取手さん関係しかこんなに歯切れが悪かったことないのに。本当に親になんか言われた?なら今の太田君のいい所を説明して見せる。

「いや、正直に話すからここで見たすべてのことを墓まで持って行ってくれ。」深刻そうな顔。これは取手さんはまだ知らないやつか。大田君にだけ言って諦めさせる的なやつ。不謹慎だけどなんかテンション上がってきた。「持っていくと誓うからなんでなのか教えて。」

「…だせぇ話なんだが、取手、いや信良の家は泊めててくれるって言ってたんだけどよ、格好つけて家に帰ろうとしたら迷って偶然ついたこの公園でかまくら作って野宿したんだよ。」…色々言いたいことがありすぎる。例えばよく警察に見つからなかったな、とかほんとに弁護できないぐらいダサい、とか。ただこれだけは口に出させて欲しい。

「ほんとに何やってんの。」

格好つけた挙句凍えてるってもうやってることがあほらしすぎる。

なんか一日前の事が頭に出てきたけどまあ気にしないということで。「ああ、今頃になっちゃったけどかまくらの中に入るか。意外とあったかいからここにいるよりはましになると思うぜ。」

ということで大田君が自分で作って一人で泊まったかまくらに入れてもらう事になった。

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