第45話

風呂に入ってきたら不思議と痛みがましになった。良子さんに感謝しながら出てくると良子さんが電話してた。しかもなんか親しげに。音を立てられないとなるとドライヤーが使えない。まあ普段から使ってないから関係ないっちゃ関係ないけど。

…俺の部屋は風呂のドアを開けたらなんか異音がするんだけどここもそうかな。入る時は開けっ放しだったからわかんない。取手さんが入る時に聞いた気がするけど特に意識してなかったから覚えてないし。それに今ここを開けると服を着てないから交番に直行になっちゃうし。俺の服はただ今乾燥中でございます。洗濯機乾燥で。文明の理具。本当に神。今文明の理具がなくなったら生きてけない。服が乾くまでの残り時間を見ると後10分。もう一回体が冷え切ってしまう。なのに良子さんには助けを求められない。求められてもどうしようもないんだけど。

そんなことは置いておいてもう一度風呂に入って時間を潰すとしよう。

多分もうそろそろ9分経った頃だと思うんだけど良子さんはまだ電話してるかな。それならもう少し湯船に浸かってるけど、もし電話が終わってるなら出たい。このぐらいの時間から体を拭き始めればちょうど体を拭き終えたぐらいで乾燥が終わると思うんだけど。とりあえず間を取って慎重に音がならないようにドアを開ける。

もう電話は終わってたらしい。さっきまで聞こえてた声が聞こえなくなってる。

そして特になんのトラブルもなく着替え終わった。外に出ると風呂場の空気がどれだけ温かいものだったか思い知った。室内なのになんかとても寒い。息が白くなるほどじゃないけど本州のこの時期だったら有り得ないぐらいには寒い。さっきまでは感じてなかったのに風呂であったまっちゃったから寒さを感じるようになってしまった。

だからさっさと俺の部屋に戻って布団に包まろう。そしてこの吹雪が明けるまでは布団の中から出ない。冬眠する。熊になって見せる。

熊になる前にお世話になった良子さんにお礼を言わなければ。リビングに行ってもいなかったから良子さんの部屋にいく。こういう時はノックをして入ると枕が飛んでこないんだったよね。多分良子さんは枕は投げないだろうけどこういう所をちゃんとしていこう。

「…良子さん、入っていいですか?」よく考えたらノックの仕方がわかんなかった。焦ったー。でもそんななかちゃんとアドリブできた俺凄い。

「いいよ。大通君、お風呂から出てたんだ。」気づかれてなかった。めんどくさいのはわかってんだけどこれはこれで悲しいなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る