第44話 あれ、これ酷いマッチポンプじゃね?

俺は今猛吹雪の中、ビルの屋上にいます。しかも手にはスマホ。こんな所で落としたらもう見つからない気がする。音も吹雪いてる音しか聞こえない。光も全然見えない。唯一の安全対策は階段の位置が分かるように腰に巻いたロープ。さてこんな持ち物、こんな天気で何をどうすれば綺麗な写真が撮れるんですか。


極寒の中ロープ一つで外に出されるのは本当に凍える。…こんな中ここに来て帰っていった取手さんは凄いな。

ボーとしてたら本当に凍えてしまうので目的を果たす。目標とは綺麗な写真を撮ること。良子さんにこんな写真を撮ってみたいです、とか言ったらこんなことになってしまった。軽く地獄。先ずはスマホのカメラを起動して適当に写真を撮ってみる。シャッター音はしたんだけど画面が雪で見えない。なので階段まで腰に巻かれたロープを辿って戻り画面を覗き込む。白くてぼやけててなんかよくわからないことになっていた。気づいたことがある。これ無理じゃね。まあ諦めるのは後にしてリトライする。だってこれ撮れなかったらなんか悔しいし、ちなみにこの感情に理由はない。

リトライ一回目。今回はシャッターをオンにして挑戦する。なんかもっと画面が白くなって終わり。二回目は明度と彩度を下げて挑戦。なんかましになった。

こんな事を繰り返してリトライ10回目。もうなんか寒さを感じてない。

これで最後にすると決めてすでに三回リトライしてる。もう本当にこれで最後。色々試した結果カメラの上のところを手で隠して明度と彩度を落として撮るのが一番マシだと気づいた。このことに気づいたのはさっき。気づくのが遅いよ、と切れかけたのはもう当然なことだといわせてもらいたい。だってふと思いつくのが寒さを感じなくなってからとか悲しすぎる。

納得のいく写真が撮れたのでさっさと室内に帰る。暖房もついてないのにあったかく感じる。雪が顔に当たらない。あれ…なんか足が痛い。かばうように歩いてもなんか痛い。なんかほんとに痛いんだけど。頑張って良子さんの部屋に戻る。暖房がついてる。これが文明。涙が出てくる。一人で声も出さずに文明に感動してたら良子さんが部屋から出てきた。「大丈夫?」なんか凄い慌ててた。「大丈夫ですよ。多少足が痛いぐらいで」「それは大丈夫って言わないよ。取り敢えずお風呂ぬるめに入れてるから入って来て。あったまればちょっとはましになるかも。」

ここが良子さんが普段使っている風呂場。流石というべきか俺の部屋の風呂場と間取りが変わらない。変な所で感動してないでちゃっちゃとあったまろう。

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