第43話 アルバム鑑賞会

良子さんの大きいサイズの物を診終えた。もう写真を見つめ続けて30分ぐらい経っていた。動くと体がバキバキ変な音をたてるぐらいにはずっと同じか体勢だった。たったの三十分でここまでなるってもう少し体を動かそう。最近は意外と動いてる気になってたんだけど意外と動いてなかったらしい。

俺の体のことは置いておいて写真の感想を言おう。もう良子さんが感想を聞きたくてうずうず、そわそわしてるから。「全部の写真が凄すぎて感想がありきたりなのしか出てこないんですけど、超きれいでした。この写真たち」俺の大好き倒置法の久しぶりの出番。こんなよく分からない文章の表現を覚えるより先にもっと語彙を増やしておけばこんな時にちゃんと感想を言えるのに。ちょっとした後悔をしつつ良子さんの顔を見ると誇らしげに胸を張っていた。俺の感動が俺の拙い語彙で伝わってよかった。やっぱりコミュニケーションって大切だよね。まあボッチのプロが言えたたことじゃないけど。厚い方は見終えることができたので次は小さな方を見せてもらう。「こっちはあんまりまじまじと見ないでね。このアルバムに入ってる写真小っちゃい頃に取ったやつだったり私の誕生日の時の写真だから。」良子さんが恥ずかしそうに教えてくれた。…出来たらちょっと見るぐらいで我慢しよう。

最初のページ。ここには小学生になりたてぐらいの良子さんが暗い部屋でケーキに刺さっているローソクを吹き消している写真だった。人の小さい頃の写真を見せてもらえるとか本当に仲良くなった人とやるイメージがあるから嬉しい。次のページには何処かの道が低い視点からとられた写真だった。少し傾いてしまってたが楽しんで、何が映るのかワクワクして撮ったと素人の俺でもわかるぐらいいい写真だった。これは初心に帰れる写真だ。さっきの厚いアルバムを見た時とは違う種類の感動。良子さんのアルバムは感動が詰まってる。

語彙を一回失うと戻ってくるまで二回目はないと思ってたけど勘違いだったらしい。今俺は語彙が本当になんもない。なぜそうと断言できるかというと俺の感想が「おお~」しか言ってない。語彙がないなりに頑張って言葉をひねり出そうとしても碌な言葉が出てこない。

「どう?こんなの見て楽しい?」あまりにも反応が同じだったからか良子さんに感想を求められた。写真がきれいだったり可愛かったりしすぎて言葉が出てこないだけなのに、というか感想言わないと。

「感動しました。なんか楽しんで撮ってるなーってわかる写真で、えーととにかくなんか感動しました。」…自分でいうのもなんだけどこの感想感動したしか言ってなくて何の情報が入ってこない感想だな。

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