第36話 恋は盲目どころじゃない
緊張が俺まで伝わってくる。
今は取手さんのいる小宮宅のインターホンを押そうとしてる。硬直し始めてからもう二十秒ぐらいが経った。普段なら何も感じないけど雪が背中に当たるし会話がない。この空白の時間が最悪というほかない。やることといえば大田君と一緒に緊張するぐらい。
大田君がどれだけ緊張しているかというとインターホンを押す前に何かを唱えてることとかが言える。ただ言ってる内容は声が小さすぎて聞こえない。
待つこと二十秒ぐらい。もう俺の体は冷え切ってる。これは一旦家に帰って風呂に入るか部屋の中で厚着をして温まるしかないな。
ボーっとしていたらようやく大田君がインターホンを押す。ここまで長かった。
「俺だ。太田だ。開けてくれ」…良子さんに一言、本当に早くして下さい。俺、なんか急に体感温度更に寒くなってきた。凍える。
インターホンから聞こえてくるのは何かにつっぼってしまっている取手さんの笑い声。この俺の体感温度を十℃近く下げたギャグで笑っているのか、これが好きな人補正というものなら恋は盲目とかの次元じゃない。もうただ怖い。
恋に恐怖しながら待っているといつもは笑顔な良子さんが無表情と言っても差し支えない表情のまま鍵を開けてくれた。あの表情見た時に気持ちが言葉なくして伝わった気がする。
良子さんと言葉の必要としないコミュニケーションをして部屋に入れてもらう。そこにはさも当たり前かの如く取手さんが堂々とベットに潜っていた。そして大田君の事を見てさっきのギャグを思い出してしまったのかプルプル震えている。
そんなに面白かった?俺としては思い出すだけで体感温度8度ぐらい下がるんだけど。
まあこのことは何処か遠くに置いておいて何をするか決めよう。
「折角~人数~集まりましたし~なにか~しませんか~」俺が言い出す前に取手さんが言ってくれた。「何やる?」良子さんが凄い乗り気なのが声色から分かる。
「折角人数いるんだから雪合戦でもするか?」大田君の提案。
外を見るとまだ大田君を迎えに行った時と同じくらいの吹雪だった。…「バカなんですかね~。あ~ごめんなさい~。バカでしたね~忍君は~」倒置法だった。そしてこの会話をしている二人は両想いというのだから驚くしかない。頑張ってこの2人をくっけなきゃ。じゃなければ良子さんとの会議が無駄になってしまう。まあ楽しかったからそれはそれでいいんだけど。
口論をしている2人をスルーしながら良子さんと二人で何をするのか決める。後で二人には聞こうと思う。
結果親密なれ天候の関係ないレースゲームになった。俺はまだこの手のゲームやったことはないからもう既にとても楽しみ。
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