第2話 闇が解放された世界の片隅で。
『闇』は発動者の意思によって効果を変える。
それは誰にも知られていない、この世界の真理だった。
聖女・ルーの意思は、確かに『闇』を発動させた。
彼女の願いは「みんなが平等に苦しむ事」。
そして、「その終わりに死がない事」である。
これは決して、彼女の優しさではなかった。
「私の自由を奪った者達に、死などという簡単な逃げ道を与えたくない」
それが理由だったのだと、彼女は後に語る。
彼女のそんな祈りは、『災厄』となって世界に降り注いだ。
逃れようもない苦痛に苛まれる。
邪険にされ、時には隔離もされる。
そんな『災厄』となって。
その『災厄』の名は、水虫。
一度発症すれば感染者に『かゆみ』と『痛み』という逃れようもない苦痛を強いるその奇病は、環境さえ整ってしまえば平民にでも王族にでも教会の信徒にでも、皆平等に感染した。
その結果、発症者は皆一様に周りから邪険に扱われ、酷い時には隔離される様にさえなった。
そんな中この国でただ一人だけ、生涯その被害とは無縁だった者がいる。
それが『聖女』ルーだ。
彼女は『闇』を使うことで永久にその脅威を消滅させた後、その功績によって得た報奨金を手に程々に快適な暮らしと、そして自由を手に入れた。
こうして彼女の願いは叶った。
そしてこの王国に、2度と『聖女』は誕生しなかったのである。
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