絶やしてはならない

第12話 再会する時

栗葉がまさかの行動に出た。

何をしたかって?

そうだな、何というか俺と愛花が2人きりで居るのを許可したのだ。

俺達は.....その事に有難く思いながら。

そして俺は栗葉の事を考えながら。


近所の美術館に来た。

とは言ってもギャラリーの様な感じで.....あまりデカくないけど。

思いながら.....目の前の絵を見る。


かなり多くの.....素晴らしい色彩の絵が飾られていた。

タイトル.....というか。

この個展の名前が障がい者が描いたという個展の様だ。

俺は.....発達障害を抱えている方の絵を見る。

そうしていると愛花が俺に寄って来た。


「.....素晴らしい色彩ですね」


「.....噂に聞いたが障がい者は特別に個性豊かだと聞いた」


「.....そうなんですね。私.....こんなに素晴らしい絵を描けるのが羨ましく思います」


「.....だな」


それから俺達は眺める。

そうしていると.....ふと、一枚の絵が目に入った。

その絵は何気ない学校の日常を描いている.....絵だが。


俺はその絵の名前の横に掛かれている描いた人の名前を見て見開く。

この.....小林有希(こばやしゆき).....って。

まさか.....いや。


まさかな。

幼馴染が描いている.....?

そんな訳無いか。

だけど同姓同名なんだが.....。


「どうしたんですか?道春さん」


「.....いや。何でもない。ごめんな。ちょっと絵に夢中になってた」


「.....そう言えばこの絵.....かなり良い感じですね。.....何だか道春さんの描き方に似ている様な.....」


「.....まさかな。気のせいだ」


だけど.....愛花の言葉が胸に詰まる。

そしてこの個展の名前を思い出してみる。

障がい者、の描いた絵の個展だ。

つまり.....まさか。


いや.....でも無いか。

そうしていると横から女の子の声がした。

俺を呼ぶ声だ。


「.....道春?道春だよね!?」


「.....?.....おま.....お前.....!!!!?」


「.....道春なんだね?.....久しぶりだね!」


そこには。

車椅子で俺をにこやかに見ている黒髪の長髪の女の子が居た。

髪型は黒のロングの髪の毛。

そして前髪に.....クリスマスのリースの様なヘアピンを装着してそれから.....顔立ちは絶世の美少女といえる顔立ち。

つまり.....小顔であり、眉毛も細かったりする。

身長は当時で言えば.....相当低かったが.....。

成長している。


しかしそれは良いが.....有希.....!?


「.....久々だね。道春」


相手は涙を浮かべて寄って来た。

俺の手を握ってくる。

何で.....何で有希が居るんだ!!!!?

どうなっている。

愛花が驚愕して俺を見ている。


「道春。私ね、絵を描き始めたんだよ?.....貴方が最近、絵を受賞しなくなったから.....その事で.....悩んで」


「.....俺の絵を真似ているのか」


「.....そうだよ。だって.....これは絶やしたら駄目な描き方だから。真似してもらったら困るから。赤の他人に。だから.....私、頑張ったよ?」


「.....何でこの場所に居る」


「私ね、障がい者の絵の中で最も優れていて.....絵の大賞を受賞したの。今日、受賞式なの」


俺は一言一言の全てにおいて涙が出てきた。

喜ぶ.....有希と裏腹に、だ。

そして膝から崩れ落ちて.....有希を抱き締める。

人が見ているが.....そんな事は関係無しに。

ただひたすらに号泣する。


「み、道春!恥ずかしい.....」


「会いたかった.....そして謝りたかった。お前に.....ずっと.....この何年間もずっと.....だから俺は.....周りと共にお前を探そうって.....」


「.....道春.....?」


「.....俺は.....お前が下半身不随になってから.....馬鹿野郎だって思った。お前に謝りたくて.....あの日の言葉を.....!それで飛び出して行ったお前は轢かれてしまった.....!」


「.....確かにそうだね。でも道春。私、生きてるよ?」


その言葉に。

俺はグスグスと言いながら、え?、と向いた。

そして.....恥ずかしがりながら俺に向いてくる有希。

それから.....俺に笑みを浮かべた。


「.....道春が絵を描けなくなったのは私が原因なんだね。分かる。道春.....優しいもんね。それで.....絵が描けなくなったんだね」


「お前の事が.....気になっていたからな」


「.....私は生きてるよ。そんなに心配しなくても.....死んだ訳じゃない。だからそれで良いじゃない?道春。あの日の喧嘩の言葉で、私が可愛くないって言葉、はショックだった。でも私は貴方を恨んでないよ。だって.....私は俯いていたから。周りが見えなかったから」


「.....」


「.....道春。お願いがあるの」


俺を見上げてくる有希。

何だ、と涙を拭いながら聞く。

すると.....有希はこう言う。

私の為に絵を描いて、と、だ。

俺はビックリしながら目を大きく開く。


「.....私、貴方が絵を描くのを待っていたの。.....この応募もこの計画も全部貴方に気付いてほしかったから。いつか貴方が戻って来るのを.....待っていたの」


「.....!.....でも俺は絵はもう描けない.....んだよ」


「.....道春。じゃあ私の姿を見ていて」


「.....え?」


私は.....貴方が絵をまた描ける様に大賞を取った。

だから.....私の大きな光る翼を見ていてそして戻って来て、と笑顔を見せた.....有希。

その姿で俺は救われた気がした。

そうしていると。


「.....道春さん.....良かったですね」


そんな言葉を愛花が掛けてきた。

ああ、と返事する俺。

すると有希が、その子は?、と目をパチクリして聞いてくる。

俺は、ああそうだった、と紹介する。


この子は俺の元同級生で.....今は学年が違うけど美術部の女の子だ。

愛花っていう。

俺に絵をまた描いてほしいって言ってくれる。

と紹介した。


「.....そうなんだ。愛花さん。宜しく」


「.....はい。お初にお目にかかります。.....お名前は聞いていました」


「.....アハハ。そんな堅苦しくなくて良いよ。私は.....愛花さんと同級生.....あれ?そういえば.....元同級生って?」


???という感じで俺に向いてくる有希。

俺はその姿に、そうだな、と説明する。

そして苦笑しながら肩をすくめた。


「.....ああ。俺な。高校を留年したんだよ。色々あってな」


「.....え.....じゃあ今.....」


「高1だよ。ハハハ」


「.....道春.....」


でも気にする事は無いよ。

と俺は柔和に笑みを浮かべる。

少しだけ悲し気な顔をする有希に、だ。

有希は、大丈夫なの?、と心配げに聞いてきた。


「.....死んでないからな。大丈夫だ」


「.....でも何だか.....心配」


「もう大丈夫だよ。お前に会えたから」


「え.....」


有希に会えてそして俺は救われた。

そんな気がするんだ。

思いながら有希を見る。

有希は.....頬を掻きながら恥じらっていた。

仕草が可愛い。


「.....そうなんだね。.....私なんかが.....」


「.....俺はお前をずっと心配していたから」


「.....有難う。道春」


そうしているとアナウンスがあった。

大賞の受賞をされた方。壇上までお集まり下さい、と。

あ。行かないと、と有希は動き出す。

車椅子の背中を押してやった。


「えへへ。道春、有難う」


「.....気にすんな。愛花。行ってみるか?」


「ですね」


それから俺と愛花は。

大賞を受賞した有希の姿を一目見ようと。

壇上まで集合した。

それから.....見つめる。

俺は.....心を軽くしながら、だ。

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